経営お役立ちコラム
なぜDXがこんなに流行っているの?

IT用語というのは何かと分かりにくいもので、昨今でもDXやらIoTといった用語が紙面を飾らない日はありません。今日(2021年3月4日付)の紙面にも、エアコンにAIを使って見守りサービスを始めるとか、DXの推進で工場の人手を半分にするといった話がありました。今回はDXとは何か、それが必要になった背景と関連する用語について簡単に解説したいと思います。

■そもそも「DX」とはなんでしょうか?
「DX」とは、デジタルトランスフォーメーション(デジタル改革:Digital transformation)の略で、2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念で、「ITの発達が人々の生活をあらゆる面でより良くしていく」というものです。「DX」の定義は明確に定まっておらず、「DX」を使う人によって様々な概念が出てきており、現在紙面を賑わしている「DX」は、「企業の最新IT利用による変革」というビジネス用語としての意味合いの方が強くなってきています。

■「DX」が流行っている理由
日本でDXが流行っている理由の一つ目は、日本の「デジタル後進国への転落」です。経済産業省でも各企業が複雑化・ブラックボックス化した既存のITシステムを改善しなかった場合に、2025年までに顕在化する問題(2025年の崖)を挙げ、これに対する対策が必須とされています。

二つ目は、日常生活の中での「デジタル化」が進んだことです。現実社会の様々なものがインターネットでつながり始めました。また技術も進み、安価で高性能な機器の登場に加え、AIやディープラーニングなどのデータ解析技術も一般化してきました。このため、インターネットを介して世の中の全ての分野のモノとコトがコミュニケーションを取ることが可能(IoT)になったのです。これにより、AmazonやGoogleによる物流改革が進み、ニュースや音楽配信サービスなどが進化し、新たにITを活用した移動サービス(MaaS)や医療分野への取り組み(AI診断や遠隔医療など)も始まっています。

三つ目は、「コロナ禍により人がしなくてもいいものはITに任せることが社会的に求められた」ことです。実はこれが今は一番大きいのではないかと思っています。テレワークによる押印廃止、Web会議などが進んだのは記憶に新しいところです。

■日本は「デジタル後進国」
「さぁ、大変だ!我が社でもDXを進めなければ!」
の前に、ではなぜ日本は「デジタル後進国」になってしまったのでしょうか?

筆者が子供の頃(1980年代)、日本は世界でも最も進んだ国の一つだと学校では学びました。当時はバブル経済がはじまりつつあった頃でしたが、その後30年の経済成長率はほぼ横ばいです。なぜ成長が止まったのでしょうか?
それは高度成長が「ヒトの力(みんなで真面目に一生懸命頑張る)」で他国には真似できない形で成功してきたからだと言われています。当時はヒトの力が強いため現場優先のボトムアップ経営でした。90年代以降ITを導入する機会は多くあったのですが、現場の努力でなんとか凌げてしまったため、IT導入が遅れに遅れてしまい今日に至っています。
ここで比較したいのが、「デジタル先進国」のエストニアです。行政デジタル化で世界の最先端を行くこの国は、1991年のソ連崩壊による独立後、国の仕組みをゼロから作っていきました。国を作るにはヒトもカネもモノもない状態でしたが、当時はちょうどIT革命の入り口に差し掛かっている時期だったため、それを最大限活用すること(ITに頼ること)ができたのです。これにより人がやらなくて済むことは極力ITを導入して、政府主導で効率化を行っていきました。現在、国のサービスの99%(結婚と不動産売買以外)は電子化しており、同国の企業も積極的にIT導入を行ったため、高い生産性を誇っています。(製造業はそれほどありませんが・・・)

日本と「デジタル先進国」のIT導入を比べると、日本は「人の作業を補完するもの」、「デジタル先進国」は「人がすべき部分とITに任せる部分を明確にしている」という違いがあります。この違いが、日本からITを活用した新サービスを生まれにくくしている要因の一つかもしれません。

「DX」を進めるためには、やや乱暴な言い方にもなりますが、経営者が「企業価値向上のためのIT導入」という意識を持ち、トップダウンでの変革を進めることが大切になってきます。(DXの本来の目的でも「人々の生活をあらゆる面で良い方向へ変化させる」とありますからね)

■「DX」関連用語
最後に、DXに関連する用語解説を掲載します。

DX:デジタル改革。最新のIT技術を導入して新しい価値を生み出すこと以下に紹介する用語はDXを進めるための方法でもある。
IoT:モノのインターネット化(身の回りのあらゆるものがインターネットにつながる仕組み)。工場でいえば、工作機器・各種工具・生産部材一つ一つがインターネットでつながること。各種センサーやタグ(バーコードやQRコード)を活用して認識する
AI:人工知能と言われているが、独自のパターンを認識してそれを活用して物事の分別を行うこと。例えば、完成品の画像から不良品を自動的に判断したり、機械の稼働率から最適な生産振分を自動的に行ったりできる
ディープラーニング:AIがパターン認識するために使う技術。脳の反応を真似ている。
RPA:人がPC上で行ってきた作業を自動化してくれるもの。例えば、エクセルで作った資料を社内アプリへ読み込ませてその結果をメールで送るなど、人手を介さないとできなかった一連の作業が自動化できる。


<<執筆者>>

平野 匡城(ひらのまさき)
2018年診断士登録、城跡広場(https://siroato.net)主宰。
移働(リモートワーク・多拠点・コワーキングスペース運営)、IT導入・改善、スタートアップ、
創業・新規事業などを知的資産経営の観点から支援している。

21/03/31 21:00 | カテゴリー:, ,  | 投稿者:広報部 コラム 担当

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