経営お役立ちコラム
中小企業の人件費向上対策 競争力を高める業務改善助成金の活用術

中小企業診断士・社会保険労務士の田名網です。中小企業の競争力強化と従業員の待遇改善を両立させる「業務改善助成金」について、その活用方法をご紹介します。

<業務改善助成金の背景と概要>
近年、最低賃金の引き上げ圧力や労働力不足、デジタル化の推進など、中小企業を取り巻く環境は厳しさを増しています。これらの課題に対応するためには生産性向上が不可欠ですが、多くの中小企業では資金不足が取り組みの障壁となっています。

業務改善助成金は、このような状況下で中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、従業員の賃金引上げを促進するための制度です。生産性向上のための設備投資等を行いながら、事業場内最低賃金(※)を最低30円以上引き上げる企業に対して助成が行われます。

<2024年度の支給額と要件>
助成金額は、1人当たりの賃金引上げ額と従業員規模に応じて決定されます。例えば、30人未満の会社が3人の時給を60円アップした場合、助成率は75%で、助成上限額は160万円となります。

200万円の設備投資を行った場合、150万円の助成金が支給されるため、実質負担額は40万円になります。

<助成金の活用例>
1.飲食業: セルフ注文可能なテーブルオーダーシステムの導入
2.製造業: 餅の製造や運搬に使用する機械の導入
3.介護業: ベッドセンサー、ワイヤレスコール、新型福祉車両の導入
4.業務プロセスの改善: 中小企業診断士による業務フローの可視化や無駄な作業の削減、多能工化による業務の平準化の経営コンサルティング

これらの施策により、作業時間の短縮、業務負担の軽減、教育効率の向上などが期待できます。

<申請時の注意点>
2024年度の申請期限は2024年12月27日、事業完了期限は2025年1月31日です。2025年度は4月以降に申請が可能となる予定です。

<中小企業診断士の活用>
中小企業診断士の経営コンサルティング費用も助成金の対象となります。以下のような業務改善の支援が可能です:

1. 業務フローの見直しによる無駄な作業の削減と残業時間の抑制
2. 業務マニュアルの作成によるOJT教育時の上司の負担軽減
3. デジタル化、DX推進のサポート

<まとめ>
業務改善助成金は、中小企業の競争力強化と従業員の待遇改善を両立させる強力なツールです。この制度を戦略的に活用することで、生産性の向上、従業員のモチベーション向上、人材確保・定着率の改善、さらには企業イメージの向上まで、多くのメリットを得ることができます。

中小企業診断士は、企業の特性に応じた最適な業務改善方法を提案、サポートします。

日本の中小企業の発展と、働きがいのある職場づくりのために、この制度を積極的に活用することをお勧めします。

<参考>
厚生労働省HP 業務改善助成金


※:事業場内最低賃金とは事業場で最も低い時間給を指します。但し、助成金上、雇入れ後3カ月を経過した労働者の賃上げが必要です。


<<執筆者>>

田名網 啓陽(たなあみ ひろあき)
中小企業診断士・社会保険労務士。社会保険労務士法人NEXPERT代表。2021年渋谷で社労士事務所を開業。助成金の活用をはじめ、労務手続き、労務相談、システム導入などで中小企業を支援。中小企業診断士とのネットワークを活かし、残業時間の削減などクライアントの問題解決にあたる。

24/11/30 21:00 | カテゴリー:,  | 投稿者:広報部 コラム 担当

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