事業者としてデジタルマーケティングを行う前に考えないといけないことを3回にわたってお伝えいたします。今回は最終回です。
(7)顧客とのエンゲージメント(※1)を高める仕組みを整えましょう
(6)で、まずは認知度をあげることから考えるというお話をしました。デジタルマーケティングでは、単に認知を広げるだけでなく、顧客との関係を構築し、長期的なファンを増やすことも重要です。
例えば、SNSやブログ、メルマガなどを活用すると考えた場合、それらを通じて顧客と双方向のコミュニケーションを取ることが求められます。顧客とのエンゲージメントを高めるために、以下のポイントを意識しましょう。
・一方通行の情報発信ではなく、対話を意識すること
SNSのコメントやメッセージに積極的に返信する、ユーザー参加型のキャンペーンを実施するなど
・顧客に役立つ情報を提供すること
商品やサービスの活用方法や成功事例の紹介、業界のトレンドや専門的な知識の共有など
・コミュニティを形成すること
FacebookグループやLINEオープンチャットなどの活用、オンライン・オフラインのイベント開催など
エンゲージメントが高まることで、顧客のロイヤリティが向上し、自然な口コミやリピート率の増加が期待できます。
(8)デジタルマーケティング運用体制を整備しましょう
(4)で、短期的な成果を期待しないというお話をしました。マーケティング事業者に施策を依頼した際は、自社と事業者の双方で施策を進めるのですが、将来的には自社だけで運用できるようにしたいものです。
デジタルマーケティングの大きなメリットは、施策の効果をデータで確認し、改善できることです。GoogleアナリティクスやSNSのインサイト機能を活用して、定期的に成果を分析できますので、体制を整備したあとは、データを活用し、継続的に改善する仕組みを考えましょう。
データ分析の際には、以下のような指標をチェックすると良いでしょう。
・Webサイトのパフォーマンス
訪問者数、滞在時間、直帰率、コンバージョン率(問い合わせ・購入など)
・SNSのエンゲージメント
いいね、シェアやコメント数、フォロワーの増減
・広告の効果測定
クリック率、広告費用対効果
これらのデータをもとに、成功した施策を継続し、改善点を見つけていくことが重要です。データを活用することで、感覚ではなく、根拠に基づいたマーケティングが可能になります。
(9)デジタルマーケティングを社内に定着させましょう
(4)で、PDCAサイクルを回すため、長期的な取り組みをしなければならないというお話をしました。デジタルマーケティングは、一度実施すれば終わりではなく、継続的な取り組みが必要です。そのため、社内の担当者が変わってもスムーズに運用できるよう、社内にナレッジを蓄積し、仕組みを作ることが求められます。
社内に定着させるためのポイントは以下の通りです。
・マニュアルを作成する
SNS投稿のルールや運用手順の明文化
広告運用の設定方法や分析手法の共有
・定期的な情報共有
社内の定例会議で進捗や結果の共有
チーム内での成功事例や失敗事例の共有と施策の改善
・外部パートナーとの連携強化
これまで3回にわたってデジタルマーケティングを行う前に考えないといけないことをお話しさせて頂きました。デジタルマーケティングは、単に広告を出すだけでは成果を得ることが難しく、戦略的に計画し、継続的に改善することが重要です。
ご紹介したポイントを参考に、自社に合ったマーケティング施策を実施し、売上拡大につなげていきましょう。
(※1)エンゲージメント・・自社のブランドなどがターゲットとなるユーザーやクライアントと、どのくらい結びついているかを示す指標。指標は個々に定義する。
第1回:デジタルマーケティングを行う前に考えないといけないこと(その1)
第2回:デジタルマーケティングを行う前に考えないといけないこと(その2)
<<執筆者>>
山森 直樹
中小企業診断士、技術士(経営工学部門)、1級販売士(日本販売士協会 登録講師)
前職では製造業の研究所で研究開発、情報システム、技術企画等に従事。現在、情報技術や経営工学の知識を活かし、経営戦略や戦術の策定にとどまらず、教育研修やオペレーション業務効率化まで幅広く支援している。伴走支援については、双方で課題や問題点をきちんと自分事にした上で、基本的な知識を理解・活用して継続することを徹底している。