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1.診断事業の実施体制の現状
(1)診断実施機関の現状
昭和41年に「中小企業総合指導所構想」が出された。この構想は都道府県における診断事業の量的、質的拡大とそのための人員の確保を図るとともに、公的試験研究機関による技術指導事業、商工会及び商工会議所による経営改善普及事業、中小企業団体中央会による組織化指導事業等各指導機関における各種指導事業との間の連携を強化し、総合的な診断を行いうる体制を整備することを主たる目的としたものであったが、国から都道府県に対し行われた具体的指導内容は次の通りである。
@:診断指導担当者の大幅な拡充と人材の確保である。このため昭和41年度から3カ年計画で各都道府県において総合指導所を設置することとされるとともに、適切な優秀な専任担当者の確保及び所要の待遇改善を図ることとされた。
A:関係指導機関における指導事業との連携、特に経営技術の総合的指導、業種別対策その他中小企業行政全般の総合的確保を図ることである。
このため、総合指導所に調整係等の機構を設け、関係指導機関及び商工担当部内各課との連絡調整を行うとともに、総合連絡協議会(現在は診断指導調整会議)を設置して、指導事業の総合的、効率的運営を図ることとされた。更に、公的試験研究機関との連携の緊密化、診断への技術専門家の参加、簡単な技術指導の実施等も総合指導所の機能として期待され、このため、必要な機構(技術系等)を設けることとされた。
B:管内各地における積極的な診断ニーズの開拓である。
このため、経営、技術の指導担当者が現地に出向き、窓口指導、現場指導を行う巡回指導制度が創設された。
C:窓口相談及び事後指導の強化である。このため総合指導所の窓口に経営、技術の専門家を配置するとともに、受診企業団体の育成・組織化を図り、これら企業の相互啓発、指導事業実施への協力等の業務を行わせることとされた。
なお、国においては、同構想を実現するための支援措置として、診断指導担当者の確保に必要な人件費補助の大幅な拡充を行ったところである。これらの結果、全国42都道府県において、独立又は本課出先機構としての総合指導所が設置された。
しかしながら、診断業務と助成事務その他の中小企業施策の有機的連携、人材及び予算確保の利便性、更には、配置転換による職員のモラールの向上等を理由として、再び本課機構に復帰する都道府県が増加しており、現在では、独立又は出先機構としての総合指導所は全国で23団体に過ぎない。
また、これら独立先は出先機構の総合指導所における診断指導業務以外の所掌状況をみると、8団体が融資その他の中小企業施策業務を所掌しており、現状における都道府県の診断実施体制は当初の構想とは必ずしも一致していない。
(2)診断指導事業交付金の導入
昭和57年7月の臨時行政調査会基本答申において、地方公共団体に対する補助金について、行財政の簡素合理化及び地方の独立尊重の観点から見直しが行われ、「地方公務員に対する人件費補助については、補助対象職員が担当する事務・事業の円滑な実施を確保するための必要な措置について検討を加え、2年以内に原則として一般財源措置に移行する」との提言がなされた。
この結果として昭和58年度から診断事業に係る人件費補助については、これに付随する事業費とも併せて交付金方式(「診断指導事業交付金」)に移行された。
診断指導事業交付金は従来の診断(指導)事業に係る補助金が各都道府県の診断種類ごとの実施件数及び診断指導員数を基準に配分されたのに対し、このような基準は設けられず、原則として都道府県における標準的診断(指導)業務量を基準に算定された経費が定額で配分されるいわゆる単位補助金である。
すなわち、従来の補助金の下では、厳格な使途・流用制限、単価設定等、その執行面においてかなりの制約が設けられていたが、交付金方式への移行に伴いこれが緩和、撤廃されたことにより、各都道府県においては、配分された交付金の枠内で中小企業者のニーズに合わせた弾力的な執行が可能となった。今後各都道府県個々のニーズに即応した診断事業の実施を図ることが可能となった点で、交付金方式への移行は十分評価されるべきである。
ただ、反面、従来の補助金制度から今回の交付金制度への切替えにより、診断事業に対する国の誘導機能が弱まることは否定できず、政策的密度の高い診断が等閑視されることとなったり、診断指導員の減員とこれに伴う診断事業の縮小を招くことのないよう、国としても都道府県に対し、今後の診断事業の実施についての具体的な指針の提示、及びこれに沿った所要の指導を行うことが必要である。
2.中小企業診断士制度の現状
(1)中小企業診断士制度の意義
中小企業診断士制度は、昭和27年、企業合理化促進法による診断制度の法制化に伴い、公的診断を担当、又はこれに協力する者の資格制度として創設され、その後昭和38年に資格認定要件が抜本的に強化(指定法人「中小企業診断協会」による資格制度の導入等)され、更に昭和44年には、名称も当時の中小企業診断員から中小企業診断士と改称され現在に至っている。
診断事業は中小企業者からの依頼に応じ、又は公的助成の前提としてその経営管理の実態を調査、分析し、経営上の問題点を指摘するとともに、その改善のための具体的方法を勧告することにより、中小企業の経営管理の近代化、合理化を図ろうとするものである。
従って、国では診断事業を推進するに当たり、企業財務から生産、販売、労務管理等に至るまで幅広い知識、能力を有する人材を、中小企業診断士として認定・登録し中小企業指導法に基づいて行われる診断事業に活用することにより、中小企業に関する経営診断の質的充実を図ることとしているものである。
なお、中小企業診断士制度は、中小企業診断指導事業に必要な専門的能力を有する者を国自らが認定・登録する唯一のものであることから、中小企業診断士として登録されることは、単に公的診断を担当又はこれに協力する場合の適格者としてのみならず、企業経営に関し、専門的コンサルタント能力を有する者として社会的にも高い評価を受けている。事実、近年中小企業診断士が裁判所の調停委員に委嘱されたり、また大型店の調整を行う商業活動調整協議会の委員を要請される等、社会的活躍の場が広がりつつある。昭和56年〜57年当時は中小企業診断士の社会的認知と評価がまだあり,又このような希望が持たれていたのである。
(2)中小企業診断士の現状
中小企業診断士数の推移をみると、昭和43年度までは概ね4,000人程度であったが、44年度の名称変更を契機として、登録者数は毎年300人ずつ増加してきており、昭和58年4月1日現在の登録者数は9,146人に達している。
都道府県の職員である者は全体の15%の約1,300人に過ぎず、残り85%の約7,800人が都道府県以外のいわゆる民間診断士であり、更に全体の50%近くは民間企業、金融機関に勤務する企業内診断士である。
●年度別中小企業診断士登録累計表(人)
(年 月) (工鉱業) (商業)
(計) (登録者数) (実人員)
51年4月 2,836 4,517
7,353 271 7,082
52年4月 2,914 4,708 7,622 262 7,360
53年4月 3,013 4,996 8,009 228 7,781
54年4月 3,058 5,189 8,247 222 8,025
55年4月 3,182 5,406 8,588 217 8,371
56年4月 3,256 5,450 8,706 204
8,502
57年4月 3,364 5,762 9,126 204
8,922
58年4月 3,472 5,878 9,350 204 9,146
59年4月 3,595 6,078 9,673 185
9,488
本来、中小企業診断士はあくまでも公的診断に携わることがその役割であるが、先に中小企業庁が総合指導所等及び民間診断士に対して実施した調査結果によれば、全国の公的診断の総業務量の概ね4分の1程度について、現場診断、専門的能力を必要とする分野等診断業務の一部において民間診断士等の活用が図られているが、この場合、民間診断士の協力は特定の者中心に行われているのが実態である。
しかし、一方現状において公的診断への協力が十分でない者も含め、全体の95%以上の者が今後事情が許せば協力する意思を有しているのも事実である。 これは一面では民間診断士の相当部分を占める企業内診断士が、勤務先との関係で公的活動に従事する時間的余裕が乏しいこと等、公的診断に協力するに際しその環境に対し様々な制約を有しているとともに他面では企業内診断士の公的診断への参加については、都道府県の側が企業の機密保持の点で不安を感じていたり、民間診断士への協力要請が個々に行われている結果、適時適切な人材の調達に支障を生じている例がある等、現状ではこれらの問題点を解消するための工夫が、必ずしも十分に行われていないところに原因がある。
なお、一部民間診断士の中には、公的診断に参加した際、受診企業に事後コンサルタントを強要したり、形式的診断にとどまり、親身になった診断を実施しなかった等により、問題が生じた例もみられることから同時に公的診断遂行者として高い倫理性をもつことが求められるところである。 後年、企業内診断士の増加による人数がコンサルタントを業とする専門中小企業診断士の人数を凌駕した結果、診断実務の機会がなく、単なる診断勉強という雰囲気や上述された中小企業診断士の質の低下により社会的信用の失墜をきたすことになるのである。
参考の為に中小企業診断士の活用状況と職業を示す。
@.中小企業総合指導所等における中小企業診断士の活用
・ 公的診断の実施に当たり民間の中小企業診断士に協力を要請していますか
イ.要請している 57
ロ.要請していない 0
・ 民間の中小企業診断士に対する協力要請はどのように行っていますか
イ.必要に応じ個別に予めリストアップしている中小企業診断士の中から行う
29
ロ.必要に応じ個別に嘱託、特別診断員として依頼する 20
ハ.必要に応じ適宜依頼する 16
ニ.診断協会(機関)の支部、支会を通じて行う 9
ホ.その他の機関を通じて行う 5
・ 総合指導所等の診断指導業務量の概ね何割程度を民間の中小企業診断士に依存していますか
イ.個別診断 37.6%
ロ.集団診断 30.6%
(平均 34.1%)
<企業総合指導所等実態調査結果>
A.中小企業診断士実態調査
調査対象:昭和55年、56年度版中小企業診断士登録名簿にある者
調査方法:各都道府県を通じて地域内の診断士500名に対し、無差別抽出のうえ、各都道府県より郵送し中小企業庁が直接回収し取りまとめた。(回収は346件・回収率69.2%)
・ 中小企業診断士の現在の職業(昭和56年4月1日現在)
現在の職業 人数 構成比
自営業(コンサルタント) 166 48.0%
自営業(税理士・会計士) 56 16.2%
民間企業 64 18.5%
金融機関 16 4.6%
公益法人 21 6.1%
その他 23 6.6%
計 346 100.0%
・ 中小企業診断士になった目的(複数回答可、回答数346名、カッコ内は%)
イ.診断指導を職業とするため
204(59.0)
ロ.他の事業(税務、経理等)を行うのにプラスになるため 95 (27.5)
ハ.勤務先において勧められたから 32
(9.2)
ニ.勤務先で高い評価を得たいから 18
(5.2)
ホ.将来に備えるため
116 (33.5)
へ.中小企業診断士の資格をとってみたかったため
28 (8.1)
ト.公的診断に協力したいため 120 (34.7)
チ.自己研鑚のため 130 (37.6)
リ.その他
17 (4.9)
計
・ これまで都道府県・10大市から公的診断への協力を依頼されたこと有無
イ.依頼されたことがある 271
(78.3)
ロ.依頼されたことはない
75 (21.7)
計
346(100.0)
・ 診断依頼に対する協力度
イ.協力した 259
(95.6)
ロ.協力しなかった
12 (4.4)
計
271
・ 昭和56年度において協力依頼を受けて協力した件数
イ.協力依頼者に対する協力者数
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診断件数
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0件
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1〜4件
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5〜9件
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10〜14件
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15〜29件
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30件〜
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計
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依頼診断士数
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126名
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48名
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41名
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32名
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61名
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38名
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346名
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協力診断士数
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126名
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49名
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41名
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33名
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61名
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36名
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346名
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ロ・協力件数
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診断区分
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診断区分
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依頼件数
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うち協力件数
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一般診断
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個別診断
集団診断
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2,291
278
|
2,189
272
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近代化促進診断
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個別診断
集団診断
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1,315
212
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1,306
205
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・ 公的診断に協力しなかった理由(複数回答) 計
イ.勤務先が多忙なため 12(100)
ロ.他のコンサルタント業が多忙なため
5 (41.7)
ハ.勤務先で企業内診断士として従事しているため 4 (33.3)
ニ.資格を取得することが目的であったため
1 (8.3)
ホ.協力するための謝金が低額であるため
4 (33.3)
へ.診断指導の経験が少ないため
2 (10.7)
ト.その他
10 (83.3)
計 回答者12名
・ 公的診断への協力についての認識度
(これまで公的診断の経験のない人も記入の対象とした)
イ.今後積極的に協力したい 177(56.2)
ロ.事情が許せば協力したい
126(40.0)
ハ.余り協力はできない
11(3.5)
ニ.わからない 1 (0.3)
計 315
昭和56年度は診断件数の減少傾向が表れてきた時代ではあるが、まだそれでもかなりの中小企業診断士が診断を実施していたことが分かる。そして同時に資格をとる目的が診断実施以外の人も現れ始めてきた。即ち将来のための診断勉強という人もでてきた。従来の中小企業診断士は診断ビジネスにおいて生計の維持を確保しなければならなかったがそうでない人も出てきたのである。この業界の中にいる中小企業診断士が仕事の受注の熱意と診断技術のレベルダウンの兆候が自然と生じてきたのも故なしとしないのである。
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