| 8.中小企業診断士の活躍と評価 |
昭和60年には既に中小企業診断員は中小企業診断士と名前が変えられている。員から士になって若干呼称では一段上になったような感じがしたのである。しかし、内容的には今までと変わりはない。この頃から企業に在籍のまま中小企業診断士の資格を取る人が増え始めた。こういう人を企業内診断士という。
中小企業庁の資料による診断件数の合計の推移と中小企業診断士の増加の推移を比較すれば、次の通りである。昭和40年から最近の平成9年の実績をみる。
診断件数と中小企業診断士の増加傾向
| 年度 |
診断件数 |
有資格者(50%協会会員) |
一人あたり件数 |
| 昭和40年 |
25,785 |
3,748 (1,874) |
6.9 (13.8) |
| 昭和45年 |
25,809 |
4,638 (2,319) |
5.6 (11.2) |
| 昭和50年 |
20,476 |
6,994 (3,497) |
2.9 ( 5.8) |
| 昭和55年 |
19,120 |
8,588 (4,294) |
2.2 ( 4.4) |
| 昭和60年 |
17,208 |
9,864 (4,932) |
1.7 ( 3.4) |
| 平成2年 |
13,932 |
11,222 (5,611) |
1.2 ( 2.4) |
| 平成7年 |
10,056 |
13,727 (6,864) |
0.7 ( 1.4) |
| 平成9年 |
3,916 |
14,536 (7,268) |
0.3 ( 0.6) |
資料:診断件数は中小企業庁・一般診断、近代化促進診断合計、中小企業診断士有資格者は(社)中小企業診断協会「創立45周年記念誌」より抜粋。中小企業診断協会会員数はこのうち50%と推定される。(平成10年度50%)
上表によれば、診断件数は昭和45年度が最大の25,809件であるが、中小企業診断士の毎年の増加によって、1人当たりの件数は昭和40年度の6.9件から5.6件、2.9件と漸減している。診断協会会員数はその半分と考えられるから、全部協会会員で受注したと仮定したら、1人当たりの受注件数はその2倍の13.8件、11.2件、5.8件となる。
平成7年度以降は受注という名に値しない。十分な受注量ではないが、少数グループに受注が偏在したことになる。大部分の人は受注出来ず、また受注したとしても受注量は極めて少ないことが分かる。
昭和55年度までは診断士の有資格者数は8,588人で、一方診断件数は減少したとしても19,120件数があって、曲がりなりにもまだ仕事があった時代である。中小企業診断士という名前は社会にあまり知られていなかったが、ともかく恵まれていた時代である。そして中小企業は中小企業診断士を経営コンサルタントとして高く評価していたのである。企業内診断士はまだ数が少なく、プロコンと称し、専門コンサルタントとして活躍した時代である。また、活躍できた時代でもあった。
中小企業庁指導部指導課が「中小企業診断事業の今後のあり方について」という本を編纂した。昭和59年6月20日に発行している。
中小企業診断士の今後の趨勢を決めるのに大きな影響力を与えるので中小企業庁指導部指導課の意向を考えてみたい。小冊子を発行するに当たって序文を指導課長・坂本春生の名前で刊行の序文を書いている。昭和59年といえば、円高の激しい時であり、今までは中小企業診断政策も順調に経緯していたが、診断総件数は次第に減少してきた時代である。また、中小企業も強弱の二極分化が進んだ時代である。
その要旨は次の通りである。
<刊行に当たって>
我が国における診断事業は、昭和23年中小企業庁発足とともにに始まり、中小企業施策の大きな柱として、現在まで中小企業の経営合理化、技術の向上等に著しく貢献した。
その間、我が国経済の発展とともに、事業を拡充し、同時に環境の変化に即応した対策を講ずるなど、中小企業に対する「知恵」の施策として、その強化に努めた結果、今日では、一般診断、近代化促進診断ともにその内容の充実が図られ、中小企業施策の中で重要不可欠なものとして定着している。
しかしながら、最近における急激な社会経済情勢の変化に伴い、診断指導事業の実施に当っては、中小企業の意識の向上に加え、情報化の進展による高度な診断指導の要請の高まりのほか、臨時行政調査会の答申にみられる診断実施体制の見直しなどを巡って、これからの診断指導事業のあり方について、早急に検討することが求められていたところである。
このような状況の中で、中小企業近代化審議会指導部から「中小企業診断事業の今後のあり方」と題して提出された意見具申は、今後における診断指導事業のあり方と中小企業施策の方向を示すものであり、また、それは中小企業の診断指導事業を実施する中小企業総合指導所を初めとした地方公共団体のほか、これに協力する中小企業診断協会及び民間の中小企業診断士、中小企業関連団体等の方々に対しても、問題の所在を明らかにし、その解決のための示唆を与えるという重要な役割を持つものと考えられる。したがって、本意見具申を広く関係者の方々にお読みいただくためにその全文をここに刊行する次第である。
なお、読者のご理解を深めるために、意見具申本文の各々の個所に、中小企業近代化審議会指導部会での審議用資料として事務局において作成した資料を点線で囲み参考図表として掲載してあるので、併せてご覧いただきたい。(参考図表は数字に置き換えた)次に「まえがき」として以下のように論じている。(要旨のみ掲載)
最近における診断ニ―ズの多様化、診断実施機関における機構の変化、更には臨時行政調査会における地方公共団体職員に対する国の人件費補助の一般財源化の答申(昭和57年7月30日基本答申)、診断事業に対して側面から協力する役割を担う民間中小企業診断士の増加等、中小企業診断事業を巡る環境は大きく変化している。
特に、臨時行政調査会の答申については、診断事業の実施体制の根幹に触れるものであり、その対応策を早急に検討する必要性が強く認識されたところである。 したがって、当部会では、診断指導事業の今日的意義と役割を再認識するとともに、現下の環境に十分対応しうるそのあり方を検討することが,今後の診断事業の発展のために必要であると考え、その審議に着手することとした。本審議に当たっては、昭和57年10月に本部会の下に設置された診断制度分化会(座長 山城章 一橋大学名誉教授)にこれを付議した。
同分科会においては、1年2か月、8回にわたって審議を行い、58年12月1日審議会報告書が作成された。本意見具申は報告書に基づいて当部会が審議を行い、とりまとめたものである。
なお、診断事業についての検討を行うに当たっては、中小企業のニーズに対応した診断の体系とその質の確保を前提とすることはもちろんであるが、制度的な面では主として診断事業の実施主体側に関するもの(実施機構、人的体制等)と診断を受ける側に密接な関係を有するもの(窓口手続、診断の具体的実施方法等)に分けられる。
今回の審議に際しては、その直接的な契機が臨時行政調査会答申であった経緯及び時間的制約により、主として前者がその対象となっている。したがって、仮に後者について何らかの問題があれば、それは残された審議事項として今後の検討に委ねることとしたい。
政府においては、本意見具申の趣旨を十分理解の上、今後の中小企業の診断事業の運営に当たるとともに、その実施機関である都道府県等に対し適切な指導に当たるよう期待するものである。
B5版全文56頁(編纂:中小企業庁指導部指導課、発行:社団法人 中小企業診断協会)の小冊子であるが、中小企業診断士に関係するものと思われる事項を抜粋する。(全体の経緯を知りたい方は本誌をお読み下さい)
1.中小企業診断事業の現状
(1)診断事業の体系
都道府県が実施する診断(以下「公的診断」という)は2種類に大別される。中小企業者又はその集団(工場団地、商店街等)から依頼に応じて実施されるもの(一般診断)と、各企業又はその集団が特別な政策的観点からの助成を受けようとする場合に、その前提として実施されるもの(近代化促進診断)がこれである。
一般診断には、個別の中小企業者を対象とした工場診断、商店診断、鉱山診断、組合診断、省エネルギー診断、コンピュータ導入促進診断と中小企業の集団を対象とした特定地域振興診断、産地診断、構造改善診断、系列診断、特定大型店進出地域商店街診断、商店街診断、広域商業診断、小売商業共同店舗診断、連鎖化事業診断、共同知識集約化事業診断がある。
近代化促進診断は、設備近代化資近貸付制度によって資金の貸付けを受けようとする個別の中小企業者を対象とした工場、商店等に対する設備近代化診断と、都道府県又は中小事業団からいわゆる高度化資金の貸付けを受けようとする者に対して行う高度化診断があり、これには工場団地診断、商業合同診断、商店街近代化診断、小売商業連鎖化診断、共同工場診断、企業合同診断、共同施設診断がある。
なお、都道府県においては、診断事業に付随して診断勧告実施後のフォローアップを図る観点から行われる事後指導、診断事業の普及の観点から行われる窓口相談、巡回指導等の指導事業も行っている。
(2)診断事業の実績と評価
@実績
診断事業は毎年、中小企業法に基づく中小企業指導計画により実施計画の基準が定められている。昭和57年度における診断実施件数(実績)は、一般診断については個別診断8、866件、集団診断518件(指導6,509件)、近代化促進診断では、設備近代化診断8,590件、高度化診断579件(指導3,061件)である。
最近5か年間の診断実施件数の推移をみると、総ての診断件数の合計は概ね年間20,000件程度で安定している。
しかし、これを詳しくみると、近代化促進診断については、設備近代化診断が趨勢的な低下傾向(昭和52年9,790件、昭和57年8,590件)にあることを反映して、全体としては減少傾向にあり(同10,362件 同9,169件)、総診断件数に占めるウエイトも54.0%から49.6%へと4.6%の低下となった。
ただ、高度化診断については、この間診断実施件数は年間600件前後で横這いで推移する一方、内容的には共同施設診断の減少に対し、団地診断、商店街近代化診断等の広域的診断が増加していることから、都道府県の診断業務量としてはむしろ増加傾向にある。
他方一般診断の実施状況をみると、近年その件数はむしろ増加している。(昭和52年8,813件、昭和57年9,384件)その内訳をみると、集団診断の減少傾向(昭和52年547件、昭和57年518件)に対し、個別診断がかなり顕著に増加傾向にあることが注目される。(昭和52年8,266件、昭和57年8,866件)。
これは、従来緊急性の高い設備近代化診断、一般集団診断のニーズが高く、総合指導所として限られた能力をこの分野に投入したため、個別診断の停滞がみられたのに対し、最近の設備近代化診断、一般集団診断の減少の中で、再び個別診断の対応が可能となった結果と考えられる。個別診断のニーズの潜在的根強さを伺わせるものである。
また、個別診断の対象企業規模をみると、本来中規模層がその対象として重点的に考えられていたが、現状ではかなり小規模層のウエイトが高い。その背景としては、高度成長期における企業規模の拡大、世代交代、高学歴化等により、中小企業の質が向上し、中上位層企業の自己診断能力の可能性が高まってきているのに対し、自己診断能力が不充分であり、また、経済的負担能力に乏しく民間診断に依存することが困難な小規模層が経営改善意欲の高まり等もあって、公的診断受診を希望する例が増加していること、更には、総合指導所等の側においても、これら小規模層を中心に診断ニーズへの対応を図ってきたことによるものと考えられる。
このような個別診断に対するニーズに加え、その内容も最近の中小企業経営を取り巻く環境の変化を反映して質的に高度かつ複雑なものとなっている。具体的には、大型店対策、新製品開発、事業転換等経営の基本戦略に係る診断ニーズが増加するとともに、オフィスオートメーション化(OA化)、ファクトリーオートメーション化(FA化)、エネルギー対策等技術面も含めて高度かつ専門的分野についての診断ニーズも増加している。
●工場診断 従業員規模別診断実績
| 従業員数(人) |
昭和43年(%) |
昭和56年(%) |
| 1〜20 |
44.8 |
56.4 |
| 21〜50 |
32.8 |
27.0 |
| 51〜100 |
13.6 |
10.9 |
| 101〜200 |
6.5 |
4.4 |
| 201〜300 |
1.7 |
0.8 |
| 301〜 |
0.6 |
0.5 |
| (回答件数) |
4,091 |
3,884 |
●商店診断 従業員規模別診断
| 従業員数(人) |
昭和43年(%) |
昭和56年(%) |
| 5人以下 |
53.9 |
67.1 |
| 6〜10 |
21.0 |
15.7 |
| 11〜20 |
13.4 |
9.0 |
| 21〜30 |
5.8 |
3.0 |
| 31〜 |
6.0 |
10.4 |
| (回答件数) |
3,970 |
4,399 |
A評価
診断事業に対する評価を先に中小企業庁が実施した調査結果によりみると中小企業者からの評価は概して高く(受診企業者の回答のうち診断勧告は有益であったとする者の割合は90%を超える。)、特に無料であることを評価する者が非常に多い。この他、@・広い視野と豊富な情報に支えられた信頼性、A・他の中小企業施策(特に融資等)との一体性、B・企業秘密の保持等の面で公的診断の評価は高い。
事実、診断実施対象企業のうち、約4分の1が過去10年間において何らかの形で診断を受診しており、これは受信企業の固定化傾向があるとの批判があるにしても、受診企業の9割以上が機会があれば、再度診断を受けたいとしていることと同様中小企業者が今後における公的診断の活用に関し極めて積極的であることの反映であり、診断事業に対するニーズ及びその有用性に対する認識は極めて高いものがある。
なお、公的診断に対するマイナス評価として、継続性に欠けるとか事後指導が不充分であることを指摘する意見、また、一部には勧告内容が物足りないとの意見が見られることもまた事実である。
@ 今後機会があれば再度診断(公的診断・民間診断を問わず)を受けてみようと思いますか
・ 受けてみようと思う 90.1%(319件)
・ 受けようとは思わない 5.1%
(18件)
・ わからない 4.8% (17件)
A 公的診断を希望する理由
・ 診断内容が信頼できるから
35.3%(97件)
・ 無料であり手軽に利用できるから
36.0% (99件)
・ 秘密を守ってくれるから 3.6% (10件)
・ テキパキ診断してくれるから 5.1% (14件)
・ 親身になって相談にのってくれるから 12.7% (35件)
・ 新鮮なニュースが入手できるから 4.7% (13件)
・ その他 2.5% (
7件)
B 公的診断と民間診断のどちらを選びますか
・ 公的診断を受けたい
68・6% (219件)
・ 民間診断を受けたい 6・3% (17件)
・ 公的・民間両方の診断を受けたい 24・8% (79件)
・ その他
0・3% (
1件)
今後の診断指導希望事項
1.売上増進に重点を置く診断を
2.経営削減の具体的手法
3.企業の将来に対する診断
4.コンピュ―タの導入診断
5.OAの手法についての診断
6.ロボット導入診断
7.従業員教育、労務問題、人材の養成
公的機関が行う診断に対する改善、意見(※は多かった意見)
1.診断勧告書が出るのが遅い、もっと早く出すべきである。
※2.診断勧告後の面接指導がほしい。
3.指導回数が少ない、年2回程度は必要である。
4.企業が立ち直るまで指導してほしい。
※5.一般論ではなく具体的指導してほしい。
6.業種に精通した指導員の派遣をしてほしい。
7.マクロ診断ではなくミクロの診断をしてほしい。
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