(1)中小企業基本法の成立
二重構造論で指摘された大企業と中小企業との諸格差、貿易為替の自由化等による解放体制への移行に伴い、中小企業の発展を図ることは産業構造を高度化し、産業の国際競争力を強め、国民経済の均衡ある発展を達成することができるという観点から昭和38年に「中小企業基本法」が制定された。
中小企業基本法の目的は「国民経済の成長発展に即応し、中小企業の経済的、社会的制約による不利を是正すると共に中小企業者の自主的な努力を助長し、企業間における生産性等の諸格差が是正されるように中小企業の生産性及び取引条件が向上することを目的として、中小企業の成長発展を図り、合わせて中小企業の従業者の社会的地位の向上に資する」ことであるとされている。
中小企業基本法は中小企業政策の基本的な考え方を示したものであり、この基本法の考え方に沿って個別政策が策定、実施されることとなった。具体的には@中小企業構造の高度化などの合理化、近代化政策 A下請企業の振興と取引環境の整備 B小規模企業対策 Cその他の特別対策等である。規模拡大を中心にして近代化、合理化による国際競争力を高める。中小企業の取引関係における不利補正を図る独占禁止政策的な考えがあった。
(2)中小企業近代化促進法制定と業種別高度化政策の展開
昭和38年に産業構造高度化政策の一環として、中小企業の生産性の向上を図ることによって、産業構造の高度化を促進するため、「中小企業近代化促進法」(近促法)が制定された。
近促法は基本法の示す施策を業種別の近代化計画により、具体的に実現するものであり、中小企業の比重の高い業種の中より特に当該職種に属する中小企業の生産性の向上を図ることが産業構造の高度化、産業の国際競争力強化等の政策目標に照らして重要な業種に着目してこれを指定し、施策が講じられる。近促法は昭和44年に改正され、中小企業構造改善計画制度が導入された。近代化計画の指定業種については、業界団体が近代化計画を策定することとされ、これにより従来の個別設備の近代化対策に加えて、業界全体の構造改善が図られることになった。これを金融面から促進するための施策として昭和38年「中小企業振興資金等助成法」の改正により、「中小企業近代化資金助成法」が制定され、これは産業の高度化(事業の共同化、工場店舗等の集団化等)の促進を組合事業の形で実施する場合に助成するものである。高度化資金融資は昭和42年に設立された中小企業振興事業団が実施することとされた。
(3)不利是正の強化
昭和39年の不況進行は中小企業に官公需確保の強化が要請された。昭和41年に中小企業の事業活動の不利の是正から「官公需確保について中小企業者の受注確保に関する法律」(官公需法)が制定された。
(4)小規模企業対策
中小企業基本法では、小規模企業に対し「経営改善発達」による漸進的近代化対策と「他企業の従業者と均衡する生活」の実現を図る社会的な施策を講ずることとされた。これに基づき経営指導員制度による経営改善普及事業の推進、昭和40年代の小規模企業共済制度の創設等が図られた。
(5) 自己資本充実政策の展開
昭和38年に「中小企業投資育成株式会社」(投育法)が制定された。同法施行後政府や公共団体等から出資を受けて東京、大阪、名古屋に中小企業投資育成会社が設立され、中小企業に対する株式等投資業務、、コンサルテーション業務を行なうこととなった。
(6)その他の施策
中小企業診断実施基本要領制定
業種別総合診断要領制定
中小企業合理化モデル工場実施要領制定
下請代金支払遅延防止等
中小企業指導事業に関する優良中小企業等表彰要領制定
が実施された。
(7)中小企業の実態
中小企業とは何か。極めて多様な要素や質を持った各種中小規模の企業であり、同一的体質ではなく、異質多元的要素を持った企業群である。単一な言葉で要約すれば大企業ではないということである。
業種、業態、規模、市場、経営者の資質、企業家精神の強弱等百社百様であり、、どの面を基準にして論ずるかによって百人百様の中小企業論があり得る。将来を嘱望されるようなベンチャー企業もあれば、企業ではなく、まさに生業というような零細企業も含まれる。
中小企業基本法による中小企業の定義があるが、これは国が助成の対象を規制するための範囲を定めたものである。小規模規定もあるが、以下に示すように量的規制1本で大産業分類ごとに1つの基準で規定している。中小企業基本法第2条、第23条による。
| 業種 |
1963年制定 |
1973年制定 |
小規模企業 |
| 鉱工業・運輸建設業等 |
従業員300人以下
又は資本金500万円以下 |
同300人以下
同1億円以下 |
20人以下 |
| 卸売業 |
従業員50人又は以下
資本金1000万円以下
|
100人以下
3,0000万円以下 |
5人以下 |
| 小売業・サービス業 |
50人以下
1,000万円以下 |
日本では中小企業の比重が極めて大きい。中小企業数を大分類で見ると @卸・小売が半分 Aサービス業20%強 B製造業14% C建設業9%弱となっている。いずれも小零細企業ほど比重が大きい。
現在国の戦略上重要な産業は大企業によって占められているが、その前段階(部品生産、部品加工)、後段階(原料加工、販売)等直接間接大企業と関係を持っており関係のあまりない中小企業は急拡大する産業分野や日用品等直接個人サービス分野に存在している。
(8)中小企業の問題点
当面、以下の問題点がある。
@あまりにも多くの中小企業が存在し、多死多産であり、底辺において産業、経済を支えているが、その在りかたは社会の安定と不安に通ずる社会階層としての問題である。
A大企業と中小企業との間に格差がある。中小企業は必ずしも社会的公正、競争的公正が保たれていない。従来の産業構造のうちには大企業の支配、収奪があったのではないかという大企業に対する問題である。
B中小企業の独立開業はジャパニーズドリームである。旺盛な中小企業の新規開業は産業社会を活性化させる。今日の大企業体制の下では新規開業より廃業の方が多くなってきた。これが貧困の問題に繋がっていく。最近(平成13年)の日本の不況(デフレ現象)や中小企業も東南アジアに海外進出している現状では製造業も小売業(商店街問題)も国内空洞化が進み、中小企業の夢である新規開業が廃業を上回ることは、なかなか難しくなってきた。
C平成9年頃よりコンピュータの発達により情報化が一段と進み、中小企業といえども世界に雄飛する企業が現れてきた。
以上の@、A、Bの3つの問題は現在と過去と同じではないが経営力のない、資金力のない中小・零細企業は今猶大企業の支配と収奪の下に喘いでいる企業は多い。
Cの中小企業は有力な中小企業であり、日本としては好ましい情況である。昭和30年代と現在の平成13年とでは中小企業でもその経営力の格差が極めて大きく、中小企業といえども弱者ばかりではないという認識が広まり、政府の中小企業基本法の一部変更の中小企業支援法改正の一因がここにもあるものと思われる。
ITの発展はここ2〜3年前頃より日本では騒がれてきたのであるが、アメリカのニュ―エコノミーによる経済成長はITによる成果であると言われている。日本の最近の不況脱出も技術面ではITによる生産性向上によって国際競争力を確保しようとしている。中小企業でも情報産業即ちコンピュータ利用やITによって企業経営の基盤としているところは大企業と肩を並べるまでに経営力を確立している。しかし、一般的に言って情報産業に関係のない中小企業は即ちコンピュータ、ITについては極めて弱く、大企業との格差は開く一方である。
ITの活用は一般の中小企業といえども勝者の地位に立つことができるのであるが、その企業は資金と人材と経営者の革新的考えが必要である。それに対しての政府としての具体策が見えない。
政府は自立できる中小企業は支援すると言っているが、情報産業に属していない一般中小企業の自らの力では資金と人材の面においてIT活用の積極的経営政策は至難の業であろう。
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