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5.中小企業診断における問題点U
昭和32年4月号の「企業診断」に当時の中小企業庁企業診断課長・川合重男氏の談話として当時の大蔵省との一問一答が載っている。
「大蔵省に対しては私(川合氏)のほうがいろいろ予算を折衝しますと、診断制度、国でやっている診断は非常にいいものだと受けられた方は感謝しているということをいうわけです。すると大蔵省はそういう効果のあるものなら、受信企業に対して有料でやったらどうか、実施機関であるところの都道府県が金ととったらどうか、ということを言うわけです。それで私たちは現在の日本の中小企業としてはどうしても金を払ってまで診断してもらうというのは非常に少なくて、やはり、相当の期間は無料診断を続けてゆかなければならないのではないでしょうかといったわけです。私どもも困っているわけです。そうかといって診断を受けた結果が前よりも落っこちて利潤が落ちたとかいいますと、そういう無駄なものに、ということになりまして非常に難しいんです。5000円、10000円を出せる企業もありますが数は少ないのではないでしょうか。また、専門の診断員を置いてやっているところはいいですが県によっては始終人事交流をしている場合はいつも目下勉強中という診断員があたっている。そういう人には有料診断をやっても成り立たない。以上が当時の診断課長川合氏の談話である。

以上を見ると川合氏の考えは予備診断は行政でない、本診断は民間に任せるということになる。本診断で民間企業から中小企業診断士は報酬をとれということである。

※民間診断員に対する考察
●中小企業庁企業診断課長
民間診断員と官庁診断員との関係がでてくる。非常に難しい。民間の診断員というものは診断実施機関の一種の予備軍と申しますか、官庁がやるだけでは人が足りないからそういう先生を多く養成して確保しておく必要があることから始まった登録診断員だと聞いております。今年(昭和32年)から診断協会を私どもの指定機関として積極的に登録診断員の養成を図ろうということになりました。ところがお話によりますと、診断員の名分はもらったが商売はさっぱりということをいうわけです。大量的に診断員を作るならわれわれも商売できるようにしてくれというわけですから、今後、官庁と民間の診断員の割合をどう調整してゆくかと頭を悩ましております。極端にいうと民生保護を要するものは国で面倒を見る。それより若干上のほうもみる。受診企業の格をズーとさげる。アフターケアの問題は民間の登録診断員の方にまわす。それでなければ登録診断員のほうから非常に苦情が出ると思います。事後指導は役所のほうは予算と人員の関係から手が回らない。事後指導でもある程度の値段を決める必要があります。

●神奈川県商工指導所員・前田栄蔵氏
民間指導員が登録をとって営業をどんどんまわしてくれというのは民間指導員が間違っている。実力さえあれば、自然に需要は増えるし、私どもで足りないのだからわれわれのほうはいくらでもお回しできる。アフターケアの問題は外部診断士はなかなか手が回らない。内部診断の場合はそれほどケースが必要ない。チラシの原稿を書いてくれといわれて原稿を書く場合もある。就業規則を作ってくれ、退職規則を作ってくれといわれ暇なときに作ってやる。

●東京都商工指導所員・長島俊男氏
私は診断という意味から言って経営改善の具体案の作成以前のことを非常に考えるのです。いい診断をしなければ、改善案のいいのが出てこない。また実行しえるものが出てこない。診断はあくまでも改善すべき点の発見にあるわけで改善すべき点を箇条書きにあげればいいのです。その改善案の具体的なものは別紙添付なり実地指導です。今、一般に言われていることはこのふたつのことがゴッチャになってひとつの経営合理化の制度だと考えられていることです。診断はあくまでも診断で、診断を改善指導を一人でやるとか二人でやるとか、現在の制度でできるとかできないとかいう問題ではなくて診断ということを理論的に考えたいということです。今までは経営指導のほうが多かったと思います。たとえば店舗を見てウィンドウをこうしたほうがいいとか、陳列はこうしたほうがいいというのは総合的な経営診断ではない。店主の経営政策から入っていくのが診断の手法だと思います。診断は経営上の問題点の発見ということにして経営改善は別にするというのが私の考えです。


以上が当時の診断を実際指導する立場の人が診断するときの考え方であり、三者三様で自分なりの考えであり、統一されていない。診断と改善指導とを分離する考え、初期指導と事後指導とを分離する考え、事後指導を考えない診断、考えても予算とか人数とか診断件数とかのいろいろの政治的問題もからんで初期診断のみで一応終了している。需要と供給との関係で民間指導員の受注量に関しては民間指導員は自分で営業活動をせよといっている。基本にあるものは官が主体であって民の中小企業診断士はその補完という考え方である。これが明確に診断制度に明示されていないので、また「社団法人」という名称が営業活動を行うことにおいて躊躇するという理由から中小企業診断士が積極的に民間における営業活動を展開しないで現在にいたっている。幸か不幸か診断制度が始まって昭和50年代までは診断件数は減少傾向であり、逆に中小企業診断士の人数は増加の一途をたどったがある程度までは需給のバランスが保たれていたのである。しかし、診断件数1件当たりの金額が少なく、一家の生計を確保できる年収を手にできる診断士はごく一部の人に限られていた。

平成12年において診断協会はやっと営業活動を展開(行政の地域支援センターへの応援)を始めたが行政の範囲にとどまっている。私の感覚からはそれでも営業活動というものからは程遠い。純然たる民間コンサルタント会社がこの30数年間において診断実績と診断能力を蓄積して積極的に営業活動を展開してきており、その実力を買われている。1例をあげればアクセンチュア(旧アンダーセンコンサルタント)が通産省と連携してしばしば統計資料や業界参考資料を出版していることは注目すべきことであろう。このコンサルタント業界の絶えざる変化を思うと私一個人の診断士としては中小企業診断協会の営業活動展開は遅きに失したという恨みは十分にある。

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