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13.コンサルティングファームの内容T

コンサルタントを業とする者にとって忘れてならないのが、他のコンサルタントの現状である。コンサルテーションを行なう企業をコンサルテイング・ファームという。外資系、金融機関系のコンサルテイング・ファームの内容を中小企業診断士は知っておく必要があると思う。

代表例として「コンサルテイング・ファーム」の仕事という本がある。その概要・ポンインとをそのまま紹介する。
  ・ 本の名前:「コンサルテイング」の仕事
  ・ 編者:週刊ダイヤモンド編集部 ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス編集部
  ・ 発行:ダイヤモンド社(1998年2月13日初版発行)

英語ではConsultingFirmであるが、Consultingは相談、企業の顧問という意味であり、Firmは会社、商会という訳語がある。分かりやすく言えば、コンサルタント会社である。この本で言う「コンサルタント」は「経営コンサルタント」に限定して説明している。

1998年初版発行なので調査・編纂は1997年と考えられ、平成9年である。日本のデフレ進行は現在は平成9年と比べて更に悪化している。各コンサルテイング・ファームも平成9年当時と現在とではその戦略は若干違いがあるものと思われるが、基本的な思想、組織、戦略等については上記の本に述べられていることと大差がないと考えてよい。競争相手を知ることは戦略の最重要事項と考えられる。


1.コンサルタントの定義 
経営コンサルタントは大きくいって2種類に大別される。1つは経営者がお伺いを立てる相手としての「先生」的存在である。もう1つがチームを組んで科学的な分析手法を使い組織的に問題点を洗い出し具体的にプレゼンテーションする「組織」としての存在である。

中小企業にとっての先生は日本の場合、公認会計士や税理士が多い。会社の経理を見る延長線上で資金繰りや経営問題に言及している。ベンチャー企業の場合にはメンター(相談相手)としてエンジェル(個人投資家)や先輩起業家などが多い。本書で取り上げるのは大企業や中堅企業、外資系企業をクライアント(受注先)として、依頼された仕事のためにプロジェクトを組み、組織として対応する企業群である。

2.コンサルタントの現状と未来
日本では経営コンサルタントを活用とする概念はあまり確立されていない。経営コンサルタントの知名度も決して高くはない。中小企業にとっての先生の助言も多くの場合それ程高度化していないし、ベンチャー企業のメンターという言葉もやっと知られてきたてきたという状態である。大企業にとって必要な組織的な経営コンサルタント集団もそうである。これから存在価値を増す職業である。この業界は米系でアメリカのまだお家芸である。

勿論、日本でも生産管理や専門業種を扱うコンサルタントの歴史は古く大企業はこの10年、多くの理由でコンサルテイング・ファームを活用してきた。シンクタンクと呼ばれる総合研究所が、野村(総合研究所)を中心に経営コンサルタント業務を活発化している。それでも、日本において経営コンサルタントの活躍はこれからである。

その理由は今までは高度成長の波に乗り、競争より株の持ち合い、規制、寡占を優先し排他の理論できたのである。それがバブル崩壊、資本自由化、金融優位の経済変動により今までのルールが通ぜず大企業でも簡単につぶれる危険性が出てきた。世界的メガコンぺテイションの時代である。

かつてCI(コーポレート・アイデンティティ)CS(カスタマー・サティスファクション)がもてはやされた時、日本企業の大多数はその本質を見そこなった気配がある。ICは企業名やロゴ・マークを一新することに置きかえられ、CSも表面的な演出に留まった例が多い。

今さし迫った課題が、一つは営業・マーケテイング分野のリエンジニアリングであり、それを通じてCI・企業のアイデンテイテイに立ち戻る。これが始まったばかりである。国際分業体制に乗り遅れないように国際進出、アジア進出のプランニングの再構築、IT(インフォメーション・テクノロジー)の徹底的導入と21世紀に向けて大企業は抜本的な大手術を必要としている。

3.経営コンサルタントの仕事
野村総合研究所のコンサルテイング業務が本格化したのが10年前。それが、1996年(平成8年)から需要が急増したという。この傾向は暫く続く。経営コンサルタントはどんな仕事をするのだろうか。企業の経営に係ることにあるのだから、無限にあると思ってもいいほどだ。

●経営コンサルタントが扱う案件例
 1.大型投資            
 2.組織設計         
 3.ビジョン、全社戦略、CI     
 4.リストラクチャリング      
 5.新規事業立上/新市場進出     
 6.特定事業の方向転換      
 7.事業ポートフォリオの見なおし変更  
 8.コスト構造の改革      
 9.営業戦略               
10.M&A            
11.管理コストの削減間接部門の効率化
12.IT(インフォメーシ)(テクノロジー)戦略 
13.海外事業戦略
14.商品開発
15.研究開発
16.人事戦略
17.リエンジニアリング(BPR)
18.会計・財務システム設計          
 である。これだけの内容の「相談」「依頼」に対し、的確な解答をだすのが、第一に経営コンサルタントの仕事である。

中小企業の場合,規模が小さいので、経営者が総てを決定し、経営者の号令で物事が進む。先生と経営者が相談すればよい。しかし、規模が大きくなり、中堅企業〜大企業への道を辿ると経営者はコンサルテイング・ファームを必要とする。
基本的にはコンサルテイング・ファームはプロジェクト(案件)毎に社内でチームを組む。この人数は4〜8人程度が多い。中心は経営コンサルタントだが、社内のシステム部門から専門家を呼ぶ場合もある。外資系の場合、アソシエートとよばれる社員が中核となり、ビジネスアナリストなどが情報収集、分析を助け、マネージャーがリーダーとなる。

経営コンサルタントの業務はクライアント(顧客)との共同作業である。クライアントの中にもチームメンバーが選抜され、共同で大きなプロジェクトチームを形成する。コンサルテイング・ファームのマネージャーがこのチーム全体のリーダーとなる。
先生と呼ばれる存在は指図やアドバイスをして社内の人間や経営者を動かす。コンサルテイング・ファームの場合は自ら汗を流すものの、最終的には社内の人間が心から納得して動かなければ意味がない。一緒に汗を流し作業を分担しながら問題解決を図るという方法をとる。

プロジェクトチームも理想的にはクライアントの社員が多い方がいい。コンサルテイング・ファームのスタッフが手伝う形であるほうがよい。これはコストに跳ね返る。当然、コンサルテイング・ファームの割く人数が多いほど企業の支払いも多くなる。

4.プロジェクトチームの仕事の内容
仕事の内容は千差万別である。経営戦略の立案、業務革新、システム構築等である。

どの段階で完全に手離れするかはケース・バイ・ケースであり、企業のポリシーにもよる。またプロジェクトによって落とし所が明確で詳細な設計が中心になる場合もある。調査分析に大きな価値がある場合もある。
何か月から数年も1つのプロジェクトに係ることもある。ほとんど派遣社員のような就業形態となる場合もある。クライアント企業の名刺を持つことすらある。

仕事は次のような段階で進んでいく。

  第一段階―――現状分析
   ・ 問題提起をするために仮説を立てそれにそって調査分析をする段階
   ・ 調査対象は4C。カンパニー(会社)、カスタマー(顧客)コンペテイター(競合)、チャネル(流通/販売チャネル)
   ・ インタービユーやアンケート、或いは社内データの洗い出し/洗い直し、マーケットデータの収集、分析
     (既存のものの場合もあれば独自にリサーチすることもある)。

  第二段階―――戦略立案
   ・ オーソライズされた仮説にそって問題点を解決する。
    或いは新規事業を実行するため具体的な戦略を描く。
    制度の骨格、組織設計、システム設計を考える段階。
   ・ 現状打開、新規の戦略展開の推進のためのベクトルや運営手法の提案を行う。
   ・ 単に大きな流れ、方向性を示唆するのみならず、具体的なステップ、戦術(個別な運用策)の展開も求められることが多い。勿論その効果も明言できなければならない。

  第三段階―――実施(運用)サポート
   ・ 実施サポートを行う場合もある。実行、立ち上げ作業とともに人員の教育(トレーニング)も含まれる。新しい事業、組織、システム、制度などが実際に動き出すまでその会社のプロジェクトチームと共に汗を流すことになる。

5.コンサルテイング・ファームの営業及び料金体系
外資系のコンサルテイング・ファームの場合、営業はパートナーの役目である。パートナーは主にトップセールスという手法で企業トップに食い込む。さらに代表がそうしたトップセールスのしやすい土壌を作る。例えば、ボストンコンサルテインググループ(以下BCG)の堀紘一代表やマッキンゼーアンドカンパニー(以下マッキンゼー)の元代表大前研一氏などが本を書いたり、講演を行ったりして企業が自社に興味をもつようにし掛ける。パートナーが実際に種を蒔きにゆく。その種をその企業の様々な部署で育てるのが、今度は各プロジェクトマネージャーの仕事になる。

勿論、企業からの依頼もある。ネームバリューや実績、或いはコンサルテイング・ファームごとの得意分野を参考にクライアントから直接依頼にくる。何社かのコンペテイションへの参加を要請される。シンクタンクの場合は調査研究の実績から付き合いの長いクライアントからコンサルテイング業務も依頼される。親会社である金融機関から紹介されるケースが圧倒的に多い。

企業はコンサルタント・ファームにいくら払っているのだろうか。
特に外資系戦略系コンサルテイング・ファームの場合、料金の算出基準は何人が何か月費やしたかというタイムチャージである。コンサルタントはキャリアによって報酬が違ってくる。だからいくらの報酬を得る人乃至チームが何か月でそのプロジェクトを達成させ得るかで料金が決まる。千差万別であるが、3カ月か1年が一般的である。大規模なプロジェクトなら5,000万円から1億円、或いはそれ以上。分野別で小規模のものならば、数百万円から1千万円というところが相場である。

6.経営コンサルタントに求められる4つの付加価値
大きく分けると次の4つになる。

@問題解決のプロとしての付加価値
A外部の独立した組織としての付加価値
B専門家としての知識、経験、情報
C業務処理の豊富な経験と集中化のメリット

@の問題解決の付加価値については更に次のように分けられる。
 ア.課題設定の付加価値
  問題を細分化して課題を設定する必要がある。深い洞察力と課題設定のプロセスのノウハウが重要である。

 イ.意思決定の付加価値
  選択を迷っている経営者にその選択が正しいということを確信させる付加価値。
  経営者が分かっていても決断が出来ない時に背中を押してやる付加価値。

 ウ.改革推進の付加価値
  改革は普通常識を覆す。失敗の確立を減らす。戦略の決定に留まることなく運用の段階まで仕事をする。

 エ.コア人材教育の付加価値
  研修、トレーニング等を意味しない。クライアントのコア人材に問題解決のノウハウやその他のノウハウを伝授する。学習する機会を与えるという意味である。

Aの外部の独立した組織としての付加価値は次のように分けられる。
 ア.独立性による付加価値 
  コンサルテイング・ファームは高い倫理性に基づき独立した運営形態でなければならない。例えばシステム構築に際してどこのパソコンやソフトウエアを導入すべきか、クライアントの為に最も効果的なアドバイスをしなければならない。

 イ.外部のプロだから出せる付加価値
  先に触れた倫理の提供と言う根源的な側面を意味する。外部の権威を使って社内を説得するというコンサルタントの使い方もあるが、これは付加価値の一側面である。正しい事に論理的な肉付けをするという役割が重要である。

 ウ.専門家としての知識、経験、情報があるから出せる付加価値 
  特定分野の長い経験に基づく具体的な知識、先端事業の具体事例、理論体系などの知識をそのまま流通させる。つまり、情報の製造ではなく、情報の流通業が経営コンサルタントの付加価値とする考えもある。

しかし、この場合は企業の個別の課題に対する解答と言うより、一般的な理論や知識を一方的に教授するスタイルになりかちである。コンサルタントというよりも権威の力により説得する先生と位置つけられるか、或いは医者というより、薬局の立場、データを運んでくるリサーチ・ファームと位置付けられることになろう。これでは経営コンサルタントとはいえない。

ただし、企業が何らかの改革を行うという際、そのイニシアチブをあくまでも社内で取り参考意見として外部情報を活用しようとすれば、理論や知識の伝授だけでも一定の付加価値は出せる。

一方で重要なプロジェクトに参加しながら、他の点について参考意見を求められる。あるいは過去のクライアントから「今度は小さな改革だし、自分たちでやってみたいから参考意見をくれ」といったオーナーもいるだろう。このあたりの反応はコンサルタントのサービス精神といったほうがいいかも知れない。勿論、この場合でも情報の単なる横流しでは効果はあがらない。個別のプロジェクトの背景についての情報や知識が必要であることは論を待たない。


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