経営お役立ちコラム
中小企業こそ健康経営を

昨今、健康経営への関心が高まっています。昨年から東京証券取引所は経済産業省と共同で、「健康経営銘柄」制度を開始し、今年は昨年より3社多い25社を選定しています。制度設定時には、選定銘柄の10年間の株価収益率は市場全体を50%上回ると、健康経営の効果も公表されています。

健康経営のメリットとして、(1)欠勤の減少、メンタルヘルス改善を通したモチベーション向上等による生産性アップ、(2)健康増進による医療費などの費用節減、(3)社員やその家族など市民の生活環境の改善に貢献する企業としてブランドイメージ向上、などが挙げられます。

 

健康経営の発祥国、アメリカでは実証と研究が進んでいます。例えば、アブセンティーイズム(疾病により欠勤している状態)よりも、目に見えにくいプレゼンティーイズム(何らかの健康問題によって業務効率が落ちている状況)による損失の方が大きく、労務費の中で最大のコストであると言われています。また、Johnson &Johnsonによる試算では、健康経営への投資$1に対して$3のリターン(効用)が見込めるとの報告があり、3倍の投資効果は特筆ものです。 こうした背景もあり、東証一部上場企業の4割がすでに何らかの取り組みを実践していますが、中小企業の7割はまだその概念自体の認知もなく、まずは啓蒙活動が必要だと考えます。

ではその効果を知っても、健康経営実施に至らない企業にとってのハードルは何でしょうか。(1)その効果が明確に測りにくい、(2)制度設計や実施を担当する人材がいない、(3)実施環境整備への投資余力に欠ける、といった点を挙げる経営者が多いようです。

 

しかし健康経営は、中小企業にこそ効用が高い施策であると考えます。中小企業では欠員時への備えが手薄になりがちで、健康を損なうことによる欠勤や退職による影響が大きく、それを防げることによる恩恵は大きいと言えます。また人材採用時のアピールポイントにもなり、人的リソース確保にも寄与します。さらには今後、健康経営実施の有無が金融機関の企業評価にも反映されることが見込まれています。実際、政策投資銀行は先行して取り入れており、中小企業の資金調達の要である銀行借入の条件にも健康経営の恩恵が及ぶことになります。

 

こうしたメリットから今後、健康経営が広がる余地は大きいと言えます。その実現に前述の経営者が抱えるハードルの解消が求められるのに対し、制度的な環境整備も期待されています。商工会議所を中心に設計が進む「健康経営アドバイザー」制度もその一つといえ、制度の下で外部リソースの活用が活性化すれば普及も進むでしょう。外部の知見を使って工夫を施せば、導入コストは相当程度抑えられ、内部の人材育成も困難ではないと考えます。重要なのは、高い費用も複雑な仕組みでもなく、経営者の意識と積極的関与であると考えます。

 

健康経営が企業にもたらすもの、それは(1)人材という無形資産の強化、(2)その毀損リスクへのヘッジ効果、それらを梃にし、(3)経営者が社員のライフバランスを重視する姿勢から醸成される一体感と動機付けから導かれる企業の成長、にあると考えます。

中小企業にとっても、健康経営に取り組む意義は高いのではないでしょうか。

鈴木 一秀

16/05/31 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:広報部 コラム 担当

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