経営お役立ちコラム
世田谷区内に広がる「ちょい飲み商店街(まちバル)」現象 (後編)

1.はじめに
 先月の前編では、「なぜ、世田谷区で増殖中なのか」、「商店街様が不得手な情報発信を診断士が側面サポート」などを中心にご紹介しました。今月の後編では、まちバルの成功継続を実現する「7つのメリット」と「7つの要件」について、具体的にご説明してまいります。

2.すべての関係者が享受できる「7つのメリット」
 まちバルが全国に広まった理由として、「得られるメリットが多い」ことが挙げられます。特に、お客様、参加店、商店街(あるいは各種組織)、まち・地域社会など多様なステークホルダーが、それぞれの立場ごとに「7つのメリット」を享受できるのです。運営側からすると、徒労感から達成感を味わえるイベントへの、自己犠牲のわだかまりから確かな効果を感じられるイベントへのパラダイムシフトなので、関係者から共感を得やすいといえます。
【まちバル7つのメリット】
① お客様:入店のきっかけづくり
⇒ ファサードバリア(入りづらさ・高い敷居)の解消
② お客様:まちの宝探し・発見の喜び
⇒ リアルな出会い×魅力的な店×温もりの場(人×店×街)の提供
③ 参加店:来店のきっかけづくり
 ⇒ 来街者ではなく、来店者(新規客)の増加
④ 参加店:自店の魅力発信
 ⇒ 再来店客・常連客(生涯顧客)の育成機会
⑤ 商店街:組織力強化
 ⇒ 一体感の醸成(フリーライダー出現の防止)&新しい人材の発掘
⑥ 商店街:加入促進対策
 ⇒ 「魅力ある商店街=加入する・しているメリット」の明確化
⑦ まち:多様性を受入れる環境づくり
 ⇒ 商店街など組織連携・融合のプラットフォーム機能の提供
「7つのメリット」をご覧になれば、まちバルが短期的な売上げのみを目的とした取り組みではないことがわかります。多少時間はかかりますが、「種をまき、水をやり、肥料をまいて、じっくりと育て上げ、立派に成長したら感謝しながら収穫する」という農業経営的な視点に立つことが重要です。ですから、継続開催が前提であり、仮に補助金や各種支援策がなくなったとしても、自主開催ができるような実施計画が求められます。また、開催する目的(参加店であれば参加する目的)についても、短期的な売上げ、例えば、まちバル開催当日の売上げ獲得だけに目を奪われることなく、あくまでも将来に向けた常連客づくりが主眼であることを忘れてはいけません。この点を見間違えると、より大きな果実をつかみそこねる結果となるでしょう。

3.まちバルを成功させ継続させるための「7つの要件」
 まちバルを模倣しようと思えば、それほど難しいことではありませんが、表層的な部分のみを模倣しても「7つのメリット」を得ることはできないでしょう。まちバルを開催する前に本質を理解し、目的をもって運営計画を推進することが成功、継続のカギといえます。また、「初回の成功」が継続開催への動機づけとして大切であることを忘れてはいけません。初開催に向けた相応の覚悟と、周到な準備は必須であるといえます。下記に、まちバルを成功、継続させるための7つの要件を提示します。
【まちバルを成功・継続させるための7つの要件】
① 目的、目標の設定
② 実行委員会(参加全店舗)の組織化
③ 十分な準備期間と事後検証
④ 魅力的なパンフレットの作成
⑤ 徹底した「前売り券」の販売
⑥ 自主財源の確保
⑦ お客様満足度の継続的ブラッシュアップ

4.おわりに
 まちバルが世田谷区で広がったきっかけは、区内最後発の振興組合で加盟店数も多いとはいえない八幡山商福会商店街振興組合様がリスクを恐れず、果敢に新しい商店街活性化策にチャレンジしたことにあります。振興組合様に限らず任意会様に対しても、「八幡山ができたのなら、うちの商店街にもできる」という機運を高め、「小・中規模商店街様のロールモデル」になりました。どんなに小さな規模で有名でない商店街様であっても、はじめからまちバル開催に不向きということはありません。実施可能な店数からスタートし、徐々に賛同者を増やせばよいのです。
末筆ながら、読者の皆様が携わっている、あるいは将来的に計画している「まちバル」と繋がり、国内各地にまちバルの輪を広げることができれば望外の喜びです。

世田谷区の『まちバル・まちゼミ』情報 http://home.d05.itscom.net/machi/

松原憲之

18/02/28 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:広報部 コラム 担当

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