経営コラム
~人手不足時代を乗り越える~ 資格取得支援を通じた人材育成 前編

1.人手不足の深刻化で人材育成が急務に
企業の人手不足が深刻化しています。最近でも、8月29日発表の7月分有効求人倍率が1.52倍となり、43年ぶりの高水準であるというニュースが報じられました。また、帝国データバンクが8月24日に発表した調査でも、中小企業の43.7%が、正社員が不足していると回答しています。
 こうした中、新規採用が難しい中小企業では、A)現在の従業員の能力を最大限に発揮する、B)現在の従業員の満足度を向上させ離職を防ぐ、という2点が重要となり、これらを実現するための人材育成をどう行うかが課題となっています。

2.中小企業にとっての、資格取得支援を通じた人材育成のメリット
 一般に人材育成というと、OJTが中心となりますが、OJTは業務そのものであり、従業員の満足度向上には直結しません。中小企業がOJT以外の人材育成を行うにあたっての問題は、A)効果が不明瞭のため実施しづらい、B)費用がない、C)時間とノウハウがない、の3点が挙げられます。
そこで今回ご紹介するのが、資格取得支援を通じた人材育成です。資格取得支援を通じた人材育成では、会社側は、上記の問題点に対応した以下の3つのメリットを得られます。
(1)能力の向上が資格という目に見える形で確認できる
(2)費用負担を抑えることも可能
(3)自己啓発の一環として、業務時間外に従業員自ら勉強が行われる

(1)については、従業員を外部研修等に参加させても、実際に能力が向上したかは目に見えず、費用対効果が不明瞭なため実施しづらい面があります。一方、資格は合格か不合格かの2択であり、能力の向上は資格証や合格証という目に見える形で確認できます。
(2)については、公的な試験費用はそれほど高額ではありませんし、費用負担の内容や条件は、予算に応じて会社側で設定することができます。
(3)については、資格取得のための勉強は、会社が義務付けを行わない限り、通常自己啓発に属し、業務時間外に行われます。また、対策本などは多様な種類があり、会社がノウハウを準備する必要もありません。

3.中小企業従業員にとっての、資格取得支援を通じた人材育成のメリット
次に、従業員にとってのメリットを見ていきます。こちらも以下の3点が挙げられます。
(1)OJTとは異なる理論的・体系的な知識を手に入れられる
(2)社会での自分の位置を確認できる
(3)自らの価値が向上し、社内外からの評価が変わる

(1)については、自社業務を効率的に行うことを目的とするOJTとは異なり、資格取得の勉強では、当該分野に関する理論的な裏付けや体系的な知識を習得でき、視野が広がります。
(2)については、従業員は業務に一生懸命であればこそ、自社という狭い世界に取り残されていないだろうかという不安に襲われるものです。こうした時に、共通指標である資格を取得できれば、社会での自分の立ち位置を確認でき、不安を軽減することができます。
(3)については、資格はあくまでも個人に属するものですから、自らの価値向上に直結します。社内では、業務と並行して努力を重ね、結果を出せる人物であるとの評価を得られ、社外では、名刺への記載などを通じ、取引先などからの信用が高まります。

また、2015年版の中小企業白書では、資格取得支援について、会社側の58.7%(19項目中6位)、従業員側の66.7%(19項目中3位)が人材定着にとって有効な取組であると回答しています。両者のニーズが合致するとともに、特に従業員の満足度が高く、人材定着に繋がる取組であることがわかります。 

4.次回のテーマ
来月の後編では、以上の事柄を踏まえ、実際に資格取得支援制度を導入するときの注意点や現在導入しているけれども十分機能していない場合によくある事例など、具体的な内容をご紹介してまいります。

小柳 吉明

17/09/30 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:column-post

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