経営コラム
~人手不足時代を乗り越える~ 資格取得支援を通じた人材育成 後編

1.はじめに
 先月の前編では、(1)人材不足の深刻化により、人材育成が急務となっていること、(2)資格取得支援を通じた人材育成を行うことによる中小企業側のメリット、(3)同じく従業員側のメリットについて、ご紹介しました。
今月の後編では、資格取得支援制度を導入する際のポイントについて、具体的にご説明してまいります。なお、以下でご紹介する制度は、「業務に必須の資格として、会社が取得を義務づけるもの」ではなく、「業務に関連する資格として、従業員が自らの意思で取得をするもの」を前提としております。

2.資格取得支援制度を導入する際のポイント
 本項では、実際に資格取得支援制度を導入する際のポイントについて、ご説明します。また、導入済みの制度が形骸化している場合に、よく生じている要因についても併せてご紹介します。

<対象資格>
 自社業務に関連する資格を人事業務担当者がリストアップしたものを、社内に公示し、意見を受け付け、最終決定します。レベル別の資格の場合、上位の級のみを支援対象とすることは形骸化の一因です。下位の級から対象とすることが、制度活用促進のポイントです。

<支援金額>
 予算との兼ね合い次第ですが、最低限は試験費用になります。教材費等の見合いとして合格報奨金を出す場合は、難易度別として次への挑戦を促す金額設定とします。なお、年間で一人あたりの申請回数や支援上限金額の制限を行うことで、予算を管理します。

<支援条件>
 合否にかかわらず、実費を負担するという考えもありますが、予算も限られており、効果を高めるためにも、実際の資格取得を条件とすることで差支えありません。なお、資格取得後一定期間内に退社した場合に費用を返還させるなどの条件を付けることは、形骸化の一因です。あくまでも自己啓発の一環ですので、このような条件は適しておりません。

<申請時期及び申請ルート>
 合格後の事後申請を認める考え方もありますが、応募期間を設けた事前申請が原則です。また、申請ルートは、人事業務担当者に直接とすることも考えられますが、上司経由が望ましいです。
これまでは、制度形骸化の要因として、「勉強時間があると思われると、業務が暇だと思われてしまう」というものがありましたが、現在は、働き方改革に基づく残業時間の低減が強く求められる時代です。上司が申請状況を事前に把握することで、従業員への配慮もでき、適切な労務管理に繋がることが期待されます。

<申請の扱い>
 上司は、申請の有無や内容を職務上の秘密として扱うこととします。制度形骸化の要因として、「落ちたら恥ずかしいので利用しない」ということがありますので、秘密情報として扱うことで、知り得る人間を最小限に抑えます。当然、「○○は受けるけど、△△は受けないのか」等の比較も厳禁です。

<その他>
 人事考課では、業務上の目標とは明確に区別し、取得できなかった場合でも、目標未達を理由としてのマイナス評価は行わないこととします。

3.おわりに
 中小企業が従業員を定着させるためには、属人的な繋がりが重要であることは今も昔も変わりません。今回の資格取得支援制度についても、会社として、「費用を負担したからよし」で終わってはいけません。
従業員が資格を取得するためには、業務時間外での努力が必須です。社長や上司は、従業員が資格を取得できた場合には、その努力に敬意を表し、きちんと祝福の言葉をかけてあげましょう。また、取得できなかった場合でも、「次、頑張ろう」と前向きな一言をかけてあげるだけで、従業員の印象は大きく異なります。
資格取得支援制度という一見無味乾燥なものではありますが、会社と従業員の結びつきを強めるきっかけとして活用することも、是非心がけていきましょう。

小柳 吉明

17/10/31 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:column-post

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