経営コラム
~上質な接客を目指して~ クレームを教訓に接客レベルを高めるノウハウを伝授します

 私たちはほとんどの産業において、接客とは切っても切れないものだと思います。また普段の人間関係においても、ほんの少しの配慮不足から関係がギクシャクしてしまうことがよくあります。「顧客満足」「顧客の立場で」「顧客のために」等々、普段よくこれらの言葉を使います。また、クレーム対応本なども沢山売られていますが、今回は実際の事例を通して配慮のある接客とはどういうものか考えていただき、お仕事にまた、人間関係に、参考になればありがたいと思います。

1.クレーム・苦情は付きものと思え

 小売業・サービス業・飲食業・金融機関・行政の窓口・製造業等、どの業種においてもクレーム・苦情は必ず発生します。私のところはクレーム・苦情(今後はクレームで統一)が無いという責任者がいたら、それはサイレントクレーマーの存在に気づいていないからであると思います。サイレントクレーマーは何も言わずにただ去ってゆく人達です。最近売り上げが減った、お客さんが少なくなった、と感じている責任者は顧客の声なき声を拾う努力と課題を改善する強い意志が求められます。

2.では早速ですがこれから事例で考えてみましょう。

 難易度は少し高いですが、自分なりに考えて、クレームを今後レベルの高い接客に変えるには何が必要か考えてみましょう。

【事例】
 物販編: 「プレゼントを開けたら空だった!」

 甲さんは会社の同僚の乙さんが退職する為、他の同僚5人の計6人でお金を出し合い退職祝いのプレゼントを贈ることにした。プレゼントを何にするか皆で意見を出し合い、万年筆を送ることに決めた、商品を任された甲さんは筆記具のショップに行き、ガラスケースの中の丁度3万円で有名ブランドの万年筆を見つけた。全体がダークグリーンで格調が高く、金のペン先もレトロなイメージに仕上がっていて、丁度乙さんにピッタリで、さぞかし乙さんも喜んでくれるのではと思い、それに決めて、カウンターの販売員に商品を指さし、「あれをプレゼント用にリボンをかけてください」と申し付けた。
 カウンターにはアルバイト2名がいて、その内の1人から、「かしこまりました、少々お待ちください」と気持ちの良い返事があった。そのアルバイトはストックをあちこち扉を開けて探していたが、同じものを見つけたようで、そのブランドのマークの付いた箱を取り出すと、テキパキとラッピングしてリボンを付け、ショッピングバッグに入れてAさんに渡した。Aさんは会計を済ませてその足で皆が待つ送別会場へ直行した。

 和やかに送別会は始まり、アルコールも入り、会も盛り上がってきたところでプレゼント贈呈式の時間となり、甲さんが皆を代表して花束とプレゼントを乙さんに渡した。皆が「プレゼントは何か見せてほしい、箱を開けてくれ!」という声に押されて、乙さんは嬉しくも照れながら箱を開けてみると一言「あっ、空っぽだ!」
 和やかに進行していた送別会場は一瞬シ~ンとなったが、誰かが「誰か隠したのではないの?」と冗談を言い、甲さんも「スマンスマン、何かの間違いだ」とその場を取り繕い、送別会はとりあえず終了した。怒りが収まらない甲さんは翌日、そのお店に電話をかけ、「責任者を出せ!」「皆の前で大恥をかいた」「どうしてくれる」「せっかくの送別会が台無しだ」と一気に溜まっているものを吐き出した。事情を聞いたA店長は「誠に申し訳ございません」とお詫びし、さらに詳しく事情を聞くために甲さんの所に直行した。

 さて、以上ですが、これは実際にあったクレームです。クレームの原因は、説明しなくてもお分かりかと思いますが、接客時にアルバイトがお客様の前で現物を確認しないで空箱をそのまま包装したことが最大の原因で、今後はお客様の前で確認することを徹底すると指導いたしました。
その他のアルバイトの接客教育にはなんら大きな問題はありませんでした。問題はお客様のところに直行した店長です。店長はこれからどのようにお詫びし、お客さまに納得して頂きますか?私はこの事例問題を札幌から福岡までのショッピングモールで店長・スタッフを相手に行っておりますが、なかなかお客様が満足できるような回答が返ってきません。それだけ難易度が高く誠意を伝えることが難しいのです。

※ 解説「顧客満足のいく対応は」

 フロアー責任者は担当責任者を伴い、お客様のところへ菓子折りを持って急行した。お客様である甲さんは、奥様と玄関に仁王立ちになり、いまだ怒りが収まらない様子であった、フロアー責任者は担当責任者と共に丁重にお詫びをした。それ以外誠意の示しようがなく、何とかお許しを得たいと願うばかりであった。
 「まことに申し訳ありませんでした、私共の教育不足で甲様、ほか乙様に不愉快な思いとご迷惑をおかけし申し訳ございません。今後、このようなことが二度と起こらないように徹底してゆきたいと思います」「ご迷惑をおかけした乙様のところには新しい商品を持ってお詫びに伺いたいと思います」何とかこの場を収めたい、という思いが強く、配慮に欠けていた。どれだけお詫びをしてもお客様の怒りは収まらない様子であった。皆の前で大恥をかかせてしまったのだから仕方がない、時間をかけて解決するしかないと思っていた。しばらくして甲さんが言葉を発した。

 「君ねえ、僕の前でいくら謝ってもらっても駄目だよ。お金を出してくれた人は他にもいるから、他の5人にも謝ってくれないか?」フロアー責任者は頭をガーンとたたかれたような気がした、配慮に欠けていたのだ、甲さんさえ説得すれば何とかなる、それで済むと思っていた。フロアー責任者はすぐさま「承知いたしました、誠に配慮に欠け申し訳ございませんでした。では早速お詫びに伺いたいと思いますので、他の5人のお名前と連絡先を教えていただけますでしょうか?」フロアー責任者と担当責任者は他の5人の名前と連絡先を教えていただくと、全員にお詫び完了後にまた甲さん宅へお伺いする約束をしてその場を離れた。

 さて、連絡先をお聞きして連絡してみたものの、なかなかアポが取れず、お住いも県内ばらばらに散らばっており、乙さん含め、すべてのお客様にお詫びし、納得していただくまでに10日ほどの時間がかかっていた。その間、全く他の仕事が手につかず、貴重な時間を費やしてしまったのだ。しかし時間がたってよく考えてみると、そこまでして解決しなければならなかったのだろうか、甲さんは皆の中でもリーダー格の人である。もし甲さんのお宅へ最初にお詫びに伺った時、こちらから先回りして「乙さんはもちろんですが、お金を皆で出し合っていただいた、他の5人の方にもお詫びして回りたいので連絡先を教えてほしい」とこちらから伝えていれば、甲さんから「ほかの5人には私のほうから伝えておくからいいよ」と言っていただけたかもわからない。配慮に欠け、目の前の甲さんを説得すれば何とかなると思っていることを見透かされたように宿題を出されてしまったと今でも感じている。

 以上ですが、読者の皆さんはこの事例を読み、お金を出していただいた他の5人の皆さんにもお詫びが必要とすぐさま連想できましたでしょうか?また、実際に当事者として「他の5人の方たちにもお詫びをして回りたい」という言葉が出るでしょうか?実際にクレームに直面してみると、何とか早く処理をして楽になりたいと思う気持ちは当たり前だと思います。しかし甲さんの立場に立ったらどうでしょうか?顔をつぶされたのです。
 そのことを理解し行動すれば配慮のきいた接客ができると思います。お客様満足とかお客様の立場で、お客様のために、などという言葉を普段からよく使いますが、配慮することのトレーニングを重ねれば必ずできるようになると思います。

藤田 潔

17/11/30 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:column-post

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