経営コラム
成長を加速させる株式公開 ~知られざるIPOの舞台裏~ 第1話 会社の成長を後押しする株式公開とは?

リーマンショック以降、低迷していた国内の新規株式公開(IPO)ですが、株式市況の回復と共に中小企業やベンチャー企業のIPOに対する関心は高まりを見せているようです。実際にIPO社数は過去6年連続で増加しており、昨年は92社まで回復しました。足元では、英国の欧州連合(EU)離脱等の混乱により、国内のマーケットにも少なからず影響を与えているようですが、このまま順調に行けば、2016年のIPO社数は久々に100社を超える可能性もあるそうです。

さて、中小企業にとってIPOには、どのようなメリットがあるのでしょうか?そして、株式公開準備では、どのようなことをする必要があるのでしょうか?今回より、計3回の連載で、株式公開の舞台裏について具体的にお伝えしていきたいと思います。

 

1年以上の準備期間を経て、いよいよ待望の新規上場の日

 

当日は、証券取引所でセレモニーが行われ、上場通知書贈呈式や記念撮影が一通り終わった後は、上場記念の打鐘(だしょう)が待っています。打鐘ができるスペース(VIPルーム)は神聖な場所とされ、セレモニー参加者の内、わずか20名しか入場が許されません。

計5回の打鍾は、「五穀豊穣(ごこくほうじょう)」に由来しており、新規上場会社の繁栄への願いが込められているそうですが、IPOプロジェクトメンバーにとって、この打鐘セレモニーこそ、これまでの株式公開準備の苦労が報われる至福の瞬間なのです。

 

さて、そもそも株式公開とは何のためにするのでしょうか?

 

日本取引所グループ(東京証券取引所及び大阪証券取引所の持ち株会社)は、同社のホームページにおいて、下記のような上場のメリットを紹介しています。

 

1.資金調達の円滑化・多様化

2.企業の知名度の向上

3.社内管理体制の充実と従業員の士気の向上

 

これらの恩恵は、すでに知名度や信用力のある大企業よりも、中小企業の方が享受できるのではないでしょうか?例えば、私がIPO準備を担当した企業では、競合他社に先んじて優秀な人材を採用していく必要がある中で、上場による知名度・信頼度向上は非常に大きな武器となりました。また、36協定遵守や各種規程の整備等による管理体制の充実、ストックオプションの付与による従業員の士気向上は、採用した優秀な人材を定着させる上で、必要不可欠なものでした。

また、従業員持株会の設立も上場企業ならではメリットの一つです。従業員持株会というのは、従業員の方々に、臨時積立(100万円未満で一度に株式を購入できる仕組み)や定時積立により、会社の株式を購入していただくものです。従業員持株会を設立することにより、従業員の福利厚生の一つとして、財産形成の機会を提供するだけではなく、会社へのロイヤリティや経営への参加意識向上に繋がるメリットがあるのが特徴です。

 

一方で、上場にはデメリットもあります。

 

IPO準備期間中は、主幹事証券会社と証券取引所による審査がそれぞれ複数回あり、審査対応の連続です。IPO準備プロジェクトメンバーは、矢継ぎ早に繰り出される膨大な質問を、各部署に割り振って、期限内にとりまとめて回答する必要があります。数ヶ月間に渡って、通常業務と審査対応が並行することになり、全社的に業務負担は非常に大きくなります。

また、会社の規模により大きく異なりますが、一般的には上場準備を行っている期間中、主幹事証券会社へのコンサルティング費用、監査法人への監査報酬、証券代行への株式事務代行手数料、証券取引所への上場審査費用が発生します。加えて、社内管理体制充実に伴う新たな人材の採用が必要となるケースが多く、その総額は年間数千万円以上になるようです。このように株式公開は費用負担が大きいため、費用対効果を念頭においた上で、上場を目指す必要があります。

さて、主幹事証券会社と証券取引所による審査とはどのようなものか、次回、具体的にお伝えしたいと思います。

吉村 崇司

16/11/30 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:column-post

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