経営コラム
ブロックチェーンが中小企業にもたらすビジネス機会

 前回(先月)の記事で、管理者がいなくても参加者同士が、改ざん困難な情報をもとに取引可能なシステムを、低コストで構築・運営できるというブロックチェーン(以下”BC”)の特徴をお話しました。
BC技術の実用化に向けて様々な取り組みが行われていますが、今回はその中から、中小企業にもたらすビジネス機会が大きいと考えられる事例をご紹介します。

■電子クーポン
最初に紹介するのは、静岡県富士市の吉原商店街が、静岡銀行などと共同で始めた電子クーポン「NeCoban(”ネコバン”)」の実証実験です。同商店街の約30店舗が参加し、平成28年12月から29年3月末まで約4か月間行われました。その内容は、買い物客がスマートホンに専用アプリをダウンロードして、商店街の各店舗での割引特典などに使える電子クーポンを利用できるというもの。電子クーポン自体は珍しくありませんが、加盟店舗側でも専用アプリをダウンロードするだけでよく、読み取り機など特別な端末をおく必要はないので導入コストを極めて低く抑えられる点がポイントです。電子クーポンの配信、取引データの記録・保管の仕組みとして、BC技術を利用しました。この事例は、資金力に制約のある個店でも電子クーポンのようなサービスを導入できるという意味で、地域や商店街の活性化にBC技術を活用できる可能性を示しています。

■貿易代金決済
BC技術を使って、中小企業向けに仮想通貨での貿易代金決済の仕組みを構築したベンチャー企業の例もあります。ECサイトを構築・運営する村式株式会社(鎌倉市)が提供する商取引プラットフォーム「&go」(”アンゴー”)です。経済産業省の2016年度「飛び出せJAPANプロジェクト」のモデル事業として、日本-フィリピン間の貿易決済のための実証実験を行い、送金手数料の節減と代金決済の迅速化に成功しました。(実証実験の結果、銀行経由に比較して決済手数料は1.67%~19.1%節減、取引完了時間は従来の3~4日から1時間~2時間にまで短縮)(*1)「&go」の特徴は、決済手段として仮想通貨のビットコインを使い、それを直接買い手から売り手へ送れる点です。中小企業向けの貿易プラットフォームとして、小口の輸出入取引を迅速かつ安価な海外送金スキームで実現するところに意味があるといえるでしょう。会社HPによれば村式は今後、アジア、米大陸、ヨーロッパ各国にまで貿易取引の範囲を広げようとしています。金融機関の海外送金手数料は一般的に高いですが、BCを活用して小口でも低コストで迅速な貿易代金決済が可能になれば、中小企業の海外取引のハードルが大きく下がります。

■スマートコントラクト
最後にスマートコントラクトについて触れます。前回記事にも書いたとおり、BC技術で構築されたシステムでは、具体的なタスクとその実行条件をプログラム化しておけば人がいなくても自動処理してくれます。従って社内の定型的なバックオフィス業務(備品発注、経費支払、文書管理など)をスマートコントラクトに委ねられるようになれば、人手不足対策になるでしょう。また条件さえ満たせば契約が自動的に執行されるという特徴も、中小企業のビジネス機会拡大に寄与します。例えば零細企業が良い製品を作っても、モノが届く前に代金を支払うのが心配で、消費者が買うのに二の足を踏むケースがありえます。しかしスマートコントラクトで代金支払いがあれば確実に配達するようプログラム化すれば、消費者も安心して製品を購入できるし、企業側も仲介業者を通さずに直接販売できるので中間マージン支払いを回避できるわけです。

BCは決して中小企業に縁遠い話ではありません。今回ご紹介したような電子クーポン、貿易取引、スマートコントラクトはその一例であり、他にも官民で実証実験が数多く進んでいます。BCにはまだ制度的、技術的な課題が多いのが現状ですが、ビジネスの仕組みそのものを大きく変える可能性を秘めています。中小企業経営者もBCの動向について関心を持ち、新規ビジネス創出や経営効率化のヒントにしてはいかがでしょうか。

(*1) 出所:村式株式会社による2017年6月23日付けプレスリリース

大橋 功

17/08/31 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:column-post

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