経営コラム

■ブロックチェーンとは? 
 仮想通貨のビットコインなど新しいインベーションを生み出すIT技術として、
ブロックチェーン(以下”BC”)が注目されています。今回はBCの仕組みと特徴、
新しいビジネスへの活用の可能性を取り上げます。
BCは「分散型台帳」といわれ、モノやお金の取引履歴をネットワーク上の
コンピュータ端末で分散して記録する技術です。
BCはどのような点で画期的なのでしょうか?通常、インターネットを通じた
取引では、金融機関やEコマース業者など、特定の組織や会社が集中的に参加者の
情報や取引履歴を管理します。シンプルで分かりやすい仕組みですが、データ保護
のために多額のシステム構築コストがかかり、管理者にも高い信頼性が必要です。
それに対してBCではこのような管理者が必要ありません。
参加者全体で取引履歴の情報をすべて共有するため、管理者がいなくてもデータの
本物性を確認できる仕組みだからです。
例えばビットコインでは、過去からすべての取引記録を10分刻みのデータの
ブロック(塊)としてまとめており、それらを時系列順に並べた取引履歴を
参加者全体で共有します。
その結果、集中管理が不要なのでシステム運営が低コスト、データの保管場所が
1か所ではないので障害が起こりにくく改ざんも極めて困難、という特徴があります。
BCが画期的な技術と言われる理由を整理すると、(1)管理者がいなくても、(2)参加者
同士が正しい情報をもとに直接取引できるシステムを、(3)安価に構築・運営できる
点です。

■ビジネスへの活用の可能性
 こうした特徴をもつBCは仮想通貨だけでなく、様々な新規ビジネスを生むと期待
されています。具体的には、
(1)送金、証券などの金融取引 
(2)土地登記、特許、電子カルテなどの情報管理
(3)遊休資産のシェアリングサービス
(4)サプライチェーンや物流の効率化
(5)管理者・仲介者不要の電子取引(いわゆる“スマートコントラクト”)
等の分野での活用であり、経済産業省は全体で67兆円の市場規模を予測してい
ます(*1)。

新規ビジネスの創出だけではありません。BCは中小企業経営にも大きな影響を
もたらす可能性があります。最も重要と考えられる点を2つ挙げておきましょう。
第1に送金コストの大幅な低下です。BCを用いた仮想通貨は、銀行やカード会社など
を通さずインターネットを通じて直接、相手方に送ることができます。その結果、
売上や仕入の送金手数料が安くなるのです。とくに海外送金手数料が大幅に低下する
可能性があり、小ロットの輸出入取引を行う中小企業にとって大きなメリットが生じる
でしょう。
第2にスマートコントラクトの活用。これはBC上に契約内容をプログラミングする
ことにより、管理者なしの自動取引を可能とする仕組みです。不動産売買を例に
すれば、契約書類の受渡し⇒資金の授受⇒所有権移転登記といった煩雑な手続きの
順序とそれぞれの完了条件を決めておき、人手に頼らず売買手続きを進める形です。
スマートコントラクトを活用できる取引や事務作業の範囲が広がっていけば、
資金力や人手に制約のある中小企業にとって、管理コストの削減や人手不足への
対応につながります。

BCが現実社会で普及するためには、まだまだ技術的、制度的な課題が残されています。
具体的には、(1)プライバシーの保護と情報分散化をどう両立させるか、
(2)リアルタイムでの処理が必要な取引にどう対応するか、(3)BCの運用手法や仕様を
どう標準化するか、などがあります。しかし、ご説明したようにBCによって管理者や
仲介業者を通さず中抜きで直接に当事者と実行できる取引や、人手をかけずに自動
処理できる取引が増えれば、取引コストの削減や事務作業の大幅な効率化につながり、
仕事のやり方にも大きな影響を与えることがわかります。
次回は、さらに具体的なBCのビジネスへの応用事例をご紹介し、中小企業にもたらす
ビジネス機会の広がりについて考えてみたいと思います。  

(*1)出所:「ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査」
(平成28年4月経済産業省)

大橋 功


17/07/31 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:column-post

1.シェアリングエコノミーとは

シェアリングエコノミーは平成27年版情報通信白書(※1)でも取り上げられており、シェアリングエコノミーという言葉を耳にすることが多くなりました。シェアリングエコノミーは言葉どおり所有する資源を分け合う経済活動ですが、個人間取引が特徴的です。この概念は決して新しいものではなく、例えば個人所有のチケットや電気製品などのオークション形式の売却も対象に入ります。

最近もてはやされているもので民泊も対象となります。大田区では国家戦略特区として民泊サービスがスタートし、区のホームページには「大田区国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(特区民泊)」(※2)として掲載されています。さらに、民泊については、本年3月に「住宅宿泊事業法案(民泊法案)」(※3)が閣議決定され、種々議論の後、2017年6月9日に成立しました。これにより、2018年早々にも全国的な制度として施行される見通しです。規制緩和・撤廃はアベノミクスの柱である成長戦略として推進されているものであり、今後も同様のインパクトある規制緩和・撤廃が行われる可能性は大きいと言えます。

 

2.シェアリングエコノミーの動向

シェアリングエコノミーが発達した背景にはインターネットの発達とスマートフォン(スマホ)の普及があると言われています。そして、これらネット環境をベースとしたプラットフォーム事業者の存在が欠かせません。

利用者は、スマホによりプラットフォームにいつでもどこからでもアクセスし、必要な取引を行うことができます。国家戦略特区として民泊が外国人向けに設定されたのも、インターネットによる仲介が簡単に行えるからです。これを国内一般に広げようという議論が進み、法制化されました。しかし、既存業界との関係やそもそも居住地の住宅建物規制、さらには安全安心の問題とも絡み、どのような形で民泊を提供すればよいのかについては、なお課題となっていると思われます。

世界的には、シェアリングエコノミーはオークションや民泊だけではありません。ライドシェアサービスとして、タクシー事業者ではなく、一般の人がタクシー事業を行うもの(日本では白タク)もあります。これは民泊以上に既存事業であるタクシー業界に大きな影響があり、各国で反対運動も起こっています。まだ日本では一部タクシー配車サービスとして利用されているものの、議論が進んでいないようです。

 

3. 小さな事業者にもビジネスチャンス

シェアリングエコノミーは、まだ認知度は低いようですが、今後大きく伸びる可能性があります。個人対個人の取引を想定していますが、もちろん事業者も参加可能です。そして事業者の方が、ホームページやフェイスブック活用も含め、専門ビジネスとして訴求できるだけの信用力という点でも高く評価されやすいでしょう。

シェアリングエコノミーのポイントは、空いているリソースの活用です。施設・設備の空きの利活用のため、安価で個人ニーズを引き寄せることで、収益拡大、設備回転率の向上、キャッシュフローの改善となる可能性があります。このリソース活用は、実は人的資源でも可能です。クラウドソーシングはその典型ですが、余裕のある人的資源をシェアリングエコノミーの考え方で利活用することも可能となります。クラウドソーシングで、社内に不足する人材確保のため外部人材・企業を取り込むことや、逆に遠隔のニーズに合ったサービスの提供をすることが可能となるのです。地方と東京のビジネスを結び付けるきっかけにもなり得るのです。

規制事業でなければ今からでもシェアリングエコノミーへの取り組みは可能です。これを商機として捉え、企業戦略の一つの切り口と位置付けて検討を開始してみてはいかがでしょうか。

通堂 重則

 

※1:平成27年版情報通信白書

http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/pdf/

※2:大田区国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(特区民泊)

http://www.city.ota.tokyo.jp/kuseijoho/kokkasenryakutokku/ota_tokkuminpaku.html

※3:住宅宿泊事業法案(民泊法案)

http://www.mlit.go.jp/kankocho/news06_000318.html


17/06/30 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:column-post

英国ロンドンのポートベロ―・マーケット、コロンビア・フラワーマーケットなど、海外では日常生活に根付いたマーケットがまちの活性化や地域住民の質の向上に大きく寄与している例が多数みられます。こうしたマーケットを活用して、東京のまちや商店街に賑わいを創り出すカギは何か?

 

海外のマーケットでの成功要素を盛り込んだ埼玉県志木市の柳瀬川のマーケットは街の活性化にも繋がっており、地域の行政機関からも注目されております。柳瀬川のマーケット主催のYanasegawa ink代表で、日本におけるマーケット研究の第一人者として海外および東京のマーケットを研究、日本で実践に移されている(一社)国土政策研究会 公共空間の「質」研究部会ダイレクター 鈴木美央様(工学博士)より、まち・商店街の活性化のヒントを伺いました。

まず、ロンドンのマーケットは、週に一回など定期的に、継続的に開催され、地域に暮らす人々の日常に根付いております。ロンドンの行政機関はマーケットの効果を理解し、都市を形成する中心政策の一つと位置付けております。その理解すべき特徴的な社会的効果は、鈴木氏の分析によると、以下の3つが挙げられます。

 

第一の効果は、生活の質の向上です。マーケットは、地域住民とマーケット出店者との交流の場になり、地域住民同士では地域コミュニティーの場となっております。また、マーケットで地域の魅力が高まることにより、地域の価値の向上に繋がっております。

 

第二の効果は、経済的効果の創出です。定期的なマーケットにより来街者の増加が見込まれ、マーケット開催日には店舗売上は非開催日よりも大きくなっていることが確認されております。出店者は週末マーケットでの出店で商品やサービスが認知され、実店舗などへの来店に繋がるなど宣伝効果が得られております。新商品やサービスを本格的にリリースする前にマーケットでスモールスタートすることで顧客のニーズの把握も可能です。その上、出店者同士での交流により新たな商品やサービスの創出につながるなどビジネスコラボレーションの効果が期待できます。また、マーケットへの出店は実店舗保有よりも負担が軽いため、創業予定者にとってビジネスノウハウの蓄積に有効です。

 

第三の効果は、環境負荷軽減です。多くは近隣で生産される野菜や商品であるため物流による環境負荷が軽く、開催場所は公共交通機関や徒歩利用が多くCO2排出が自動車利用より少なく、環境に優しいという効果は見逃せません。

 

こうした3つの効果が並立しているからこそ、持続的な開催が可能となっております。

 

埼玉県志木市の柳瀬川マーケットでも、これらの社会的効果を発揮させる仕組みを随所に組み込んでおります。その結果、毎回数百人の来場者が得られたほか、出店者からも高い満足の評価を得られており、その成果に注目した地域内外の行政機関、地域機関からも問合せを受けるようになりました。

東京のまちや商店街への展開には幾つかの方策が考えられます。そこで、企画段階よりマーケットの3つの効果を十分に理解し、効果が発揮できるような仕組みづくりを行うことでイベントを越えた、まちの魅力を向上させる方策へと展開していくと鈴木氏は強調します。現在実施しているマーケットの開催場所を通行量の多い箇所に移して賑わいを演出し集客力を高めたり、地域のコミュニティーの場所として確立している公園や寺社の空間の活用をしてみたり、商店街で既存店は自店の前に出店し、空き店舗の前に外部出店者が出店して共存化を図ったりするなど、地域の特長を活かしつつ、海外マーケットにみられる社会的効果を発揮できる仕組みづくりを行うことが、活性化の方策の一つとして有効です。

小島 洋介


17/05/31 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:column-post

事業承継は、経営者にとって自ら進退に関わることなので意思決定の中でも最も難しい経営判断のひとつになります。とはいえ、事業承継を先送りにしていると打つ手が限られるばかりであり、後回しにして良いことはありません。

経営者が、今まで築きあげた会社を次の世代に残すためにも事業承継と向き合ってはみませんか。

 

■事業承継計画の立案方法とポイント

1.事業承継の進め方

事業承継の進め方は、大まかに「現状の整理」→「後継者の確定」→「事業承継計画策定」の手順となります。現状の整理として、財務状態、株主構成、経営者個人の資産、家系図、親族の状況、後継者候補の有無、経営状況などの情報を収集して整理します。会社の状況に応じて後継者を検討し、後継者が確定したら、事業承継計画として「いつ承継するのか」「だれに承継するのか」「なにを承継するのか」「どのように承継するのか」を具体的な内容と対策、実行する時期を策定します。

 

2.代表的な検討項目や留意する事項

事業承継計画の立案は、多面的にバランスよく検討していく必要があります。その中で、代表的な検討項目や留意する事項は次のとおりです。

 

(1)後継者の選択と育成

誰に後継者として会社を引き継がせて、どのように後継者として育成していくかです。後継者を選択するパターンとして、子供や親族へ承継する「親族内承継」、会社のことをよく知る従業員に承継する「親族外承継(従業員等)」、M&A等により第三者に承継する「親族外承継(第三者)」に分けられます。「親族内承継」や「親族外承継(従業員等)」は、早い時期に後継者を決定することで時間をかけて計画的に育成することができます。後継者に社内で各部門をローテーションさせることで経験と知識を習得させ、責任ある地位に就けて権限を移譲し、重要な意思決定やリーダシップを発揮させることで、経営者としての自覚を芽生えさせるように育成します。

 

(2)経営権の安定化(自社株の後継者への集中)

会社経営の重要な意思決定は、株式会社の最高の意思決定機関である株主総会となります。後継者がリーダシップを発揮して安定的に会社経営を行うためには、いかに自社株を後継者に集中させることができるかです。そのために、現状の株主構成を把握して、事業承継後の株主構成について考えていきます。

 

(3)株価対策

後継者が誰になるのかによって株価対策が大きく変わりますが、「親族内承継」では、後継者の買い取り資金の負担を少なくするために、自社株の評価額を合法的に圧縮できるかがポインになります。逆に、M&Aのような「親族外承継(第三者)」では、会社売却価格を高く算出するために、会社の磨き上げを行い、価値を高めていくことがポインになります。

 

(4)事業の継続性

後継者の下で、自社の競争力の源泉を損なわずに事業を継続していけるかです。これまで経営者に依存していたノウハウや経験、顧客や協力会社・調達先との繋がりなどの「目に見えにくい経営資源」を整理して、自社の魅力を後継者に引き継ぐことがポイントになります。

 

(5)人間関係への配慮

後継者はもちろん、親族や従業員等の利害関係者の配慮も必要になります。経営の安定のために、自社株や事業用資産を後継者に集中させることは重要なことですが、一方で公平な相続という観点からは反することになります。「争族」防止のためにも後継者以外の相続人に対して家族会議を開き、充分な合意形成を得ることが大切です。また、後継者が会社運営にあたり、今までの経営者の片腕を担ってきた古参幹部の処遇に考慮することも、円滑に事業承継を進めるためにも重要になります。

 

■事業承継を踏み切るために

事業承継は、経営者を日頃サポートしている専門家や片腕となる部下などの提言によって始まることは期待できません。それは、提言する立場の側も経営者の交代によって地位が危うくなるからです。事業承継を始める判断は、経営者自身で「気づき」を得て、そして「行動」するしかありません。

事業承継で取るべき対策は、個々の会社の状況によって大きく異なります。自社に合った最適な事業承継計画を立案するために、まずは、自治体、商工会といった公的機関などが行う事業承継セミナーや個別相談会を活用してみてはいかがでしょうか。

例えば、品川区では事業承継支援事業として、区内の中小企業の経営者・後継者を対象に、お悩みに対するアドバンス、診断、事業承継プラン策定などを行う専門家派遣の事業があります。このような取り組みは、今後、他の自治体にも広がっていくと考えられます。

早めの事業承継対策の取り組みにより、今まで築きあげた会社を未来に託してみませんか。

羽田 巧


17/04/30 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:column-post

中小企業、各種法人経営者の皆様は、事業の安定と成長に向けた戦略をお考えのことと
思います。戦略の一歩は自社の強みを把握し、計画的に実施していくことです。
実施が社内の経営資源だけでは難しい場合、実務経験のある専門家の活用をお考えに
なっては如何でしょうか。経営リスクの低減、人材育成に繋げている社会福祉法人
<保育所>の事例をご紹介します。
1.支援に至る経緯

社会福祉法人(保育所)は助成金が主たる財源であるため、一般的に事務部門に人手
をかけられない状況にあり、法人責任者及びそれに準ずる職員が一気通貫で事務処理を
進める場合が多いようです。園長が理事会運営、自治体の保育所指導検査準備、人事総務
経理管理、給与計算等の職務を抱えています。園長に集中している職務を他の
スタッフに分散し、内部統制を効かせられるような仕組づくりの要請があり次の支援に
取り組んでいます。
2.支援内容

1)事務処理マニュアルの作成
職員が仕事内容を早く理解でき、進められようにするため、園長、職員から仕事内容
を聞き取り、内部統制(牽制)を考慮した事務処理マニュアルを作成しました。
手順の詳細は省略しますがマニュアル管理項目は次の通りです。

1.出納帳管理(小口現金、預金出納)
2.入金管理(延長保育料入金管理、一時保育料)
3.支払管理(業者支払その他)
4.銀行残高証明管理
5.総務庶務(入・卒園式、健康診断、出欠勤、園内清掃自主点検、年賀状名簿、
非常用備蓄点検、園発行誌、保護者対応等)年度末会計資料作成(未収入金、未払金等)
6.給与計算
7.行政対する申請手続き(運営費補助、サービス推進費等)
8.子育て支援事業
9.管掌自治体指導検査
10.貴重品管理(鍵、預金通帳、印鑑等)

2)指導検査対応チェックリストの作成
東京都及び市区町村が社会福祉法人並びに傘下保育所に対して毎年定期的に指導検査が
実施されています。園長中心の検査準備を他のスタッフが日頃の業務のなかで行って
いけるように、チェック項目を現場責任者別に分類した自己検査チェックリストを作成し
担当者が準備できるようにしました。

3)職務分担表の作成
全般管理、保育・看護、総務庶務、人事、経理等の職務を担う理事、園長、主任
主任補佐、担当者等が責任範囲を明確にして仕事を進められように職務ごとに「担当申請
→上長決定→最終責任者承認」の手続フローを作成しました。
3.支援後の状況

最近、事務職の交代がありましたが、事務処理マニュアルに沿って引継ぎが円滑に
行われています。指導検査対応マニュアル、職務分担表についてはこれから職員に運用研
修を実施することにしています。更に、人材育成の視点にたって、職員が自発的に成長目標を
設定してその進捗を考課に反映していく人事考課制度、職員の採用と定着に結びつく
賃金体系の検討をすすめています。

砂村  栄三郎


17/03/31 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:column-post

中小企業経営者の方々の中には、「何か自社製品や自社の取り組みにお墨付きが欲しい」と考えておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。たとえば、経営革新計画を作って認定を受けたり、経営力向上計画の認定を受けたりしている企業さんもおられるでしょう。実際、認定を受けるとサイトで公表されたりするので、一種のお墨付きになります。

「経営革新支援」 http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/

「経営強化法による支援」 http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/

 

今回、ここでご紹介するのは、東京商工会議所が毎年行っている「勇気ある経営大賞」という賞です。

勇気ある経営大賞 https://www.tokyo-cci.or.jp/market/keieitaisyo/

 

この賞は、既に14回を数えている、つまり14年間続いている経営大賞です。先のサイトをご覧いただくとわかりますが、概要を引用すると、「東京商工会議所が、厳しい経営環境の中で勇気ある挑戦をしている中小企業またはグループ(以下、企業)を顕彰する制度」です。

主要な対象者が中小企業になっており、勇気をもって挑戦している企業は対象となるわけです。個人的意見で恐縮ですが、一生懸命やっている中小企業の多くは勇気ある挑戦をしているケースが多く、この経営大賞に応募できると考えています。

 

もちろん、やる気がないとか、このままでいいんだと考えている中小企業にこの経営大賞はお勧めしませんが、勇気をもって大きな設備投資をして事業拡大を狙ったり、これまでになかった新しいサービスを開発して一生懸命販売にいそしんだり、その販売の仕組みが他の中小企業の手本になるようなものだったりすれば、大賞も夢ではありません。

ちなみに、大賞を取ると、賞金200万円(原則1社)、優秀賞でも賞金50万円、特別賞は賞金30万円だそうです。

過去の受賞企業を見てみましょう。

https://www.tokyo-cci.or.jp/market/keieitaisyo/d_archive/

 

ご覧いただくとわかりますが、確かに大賞を取った企業は有名になっているところが多いかと思います。一方、大賞でなくても有名になっている企業もあります。これは、賞を取るとこの賞に協力しているフジサンケイビジネスアイ社などが取材したりするためと思われます。実際、MXテレビなどにも受賞企業は出演していますから、メディアへの露出が増えるわけです。こうなると、当然、名が知られてきます。

さて、この賞への応募ですが、時期だけをきちんと意識すれば、条件などは特別ありません。応募要領が次にあります。

応募要領

https://www.tokyo-cci.or.jp/market/keieitaisyo/c_detail/

 

未上場で、中小企業の枠に入っていて、一都八県に本社があり、東京に事業拠点があればOKです。

こちらにある選考基準をよく見て、自社の経営がこの選考基準に当てはまりそうだなという方はぜひ、応募を検討してみてください。

選考基準

https://www.tokyo-cci.or.jp/market/keieitaisyo/c_select/

 

勇気ある経営大賞に認められれば、きっと有名企業となり、受注も増えるのではないですか?「うちなんてねぇ」といわず、自社の良いところを探し、過去の挑戦を探し、これからの挑戦を生み出してみてはいかがですか。

中小企業の勇気ある経営が日本の経済をこれまでも、そしてこれからも支えていくのですから。

佐川 博樹


17/02/19 04:51 | カテゴリー: | 投稿者:column-post

ロードショーと言えば、一般的には映画の封切りを表すかと思いますが、金融業界においては、IPO前に機関投資家を訪問する一連のアクションをこのように表現します。機関投資家とのミーティング直後に「会社の魅力やリスク等」についてアンケート調査を行います。アンケート結果は、その後の公募価格決定に大きく影響するため、発行会社の資金調達を成功させる上で、ロードショーは非常に重要なイベントになります。

 

■ロードショー(プレ・マーケティング)とは?

上場承認後に行われる機関投資家とのミーティング。上場承認時に目論見書に記載された株価は、まだ投資家の需要を確認する前の「想定価格」であるため、価格発見能力に優れた複数の機関投資家による評価や株式購入意向等を把握し、それらを参考に「仮条件の価格帯」を決定していく必要がある。ロードショーでは、「One-on-One(ワン・オン・ワン)」と呼ばれる機関投資家との個別ミーティングと「ラージ」と呼ばれる大人数の投資家向け説明会の2種類がある。

ロードショーは上場承認日の翌日から10営業日程度、毎日、数社の機関投資家を訪問します。各ミーティングの間隔は30分程度と非常にタイトなスケジュール構成の為、移動はハイヤーを利用する会社が多いようです。私がIPO準備を担当した企業でも、代表取締役と1~2名のスタッフでチームを結成して、早朝からハイヤーで東京駅周辺を中心に連日、機関投資家を訪問しました。ちなみにロードショーのスケジューリングは上場承認直後(15:30頃)に主幹事証券会社の担当部署が一斉に行う為、具体的な日程は上場承認日の19:00くらいにならないと固まらないようです。

 

■ロードショーの1日

09:00-10:00 機関投資家A

10:30-11:30 機関投資家B

11:30-13:00 ランチ・移動

13:00-14:00 機関投資家C

14:30-15:30 機関投資家D

16:00-17:00 機関投資家E

 

ところで、ロードショーの成否はどのように判断するのでしょうか?実は、一般投資家であっても、目論見書に当初記載されている「想定発行価格」とロードショー後の訂正目論見書に記載される「仮条件の価格帯」の差額からロードショーの成否を推察することが可能です。一般的には、仮条件の価格帯が想定発行価格より高ければ、ロードショーは成功、低ければ失敗と判断されるようです。

平成28年にIPOした企業の事例で、具体的に見ていきましょう。例えば、6月29日に東証一部に上場した株式会社コメダホールディングスの場合、当初の想定価格1,960円に対して、仮条件の価格帯は1,780~1,960円と切り下がっており、機関投資家から厳しい評価を受けた可能性があります。一方で、7月15日に東証一部に上場したLINE株式会社の場合、当初の想定価格は2,800円であったのに対して、仮条件の価格帯は2,900~3,300円と切り上がっているので、投資家の需要が高く、ロードショーが上手くいったと考えられます。

 

さて、ロードショーではどのような説明が行われているのでしょうか?東証マザーズ上場企業の場合、その参考となる資料が「成長可能性に関する説明資料」として、開示されています。

例えば、平成28年3月に上場した株式会社PR TIMESの「成長可能性に関する説明資料」は、「1.会社概要、2.事業環境、3.会社の強み、4.成長戦略」といった構成になっています。また、6月に上場した株式会社ストライクの場合は、「1.会社概要、2.市場動向、3.当社の特徴・強み、4.成長戦略」という構成になっています。つまり、「当社がターゲットとしている市場は成長市場なのか?」、「その中で当社はどのような差別化・特徴を有しているのか?」、「今後、どのような戦略で成長する計画なのか?」という視点で、機関投資家向けに説明を行っていることが分かります。

 

中小企業の経営においても、事業計画を策定する上で、非常に参考となる内容が多く含まれていますので、興味がある東証マザーズ上場企業の「成長可能性に関する説明資料」を一度、調べてみることお勧めします。

 

吉村 崇司


17/01/31 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:column-post

前回は上場のメリット・デメリットについて見ていきましたが、今回は、引受審査についてみていきたいと思います。

上場に至るまでの審査には、主幹事証券会社による「引受審査」と証券取引所による「取引所審査」があります。引受審査は、主幹事証券会社が、引受責任を果たすために、会社から収集した資料等を基に、有価証券の引受けの可否を判断する審査です。その後の取引所審査は短期間に膨大な質問や指摘に対応していく必要があるため、当初のスケジュール通りに上場するためには、この引受審査期間中にどれだけ課題をつぶせるかが非常に重要なポイントになります。

 

■引受審査とは?

引受審査は、書面審査やヒアリング、実査等で構成されており、時期や内容により、大きく下記の2つに分かれる。

(1)取引所への上場申請に係る審査(~上場申請まで)

主幹事証券会社が取引所への上場申請に必要な「推薦書」を出すために行う審査であり、「公開するのにふさわしい会社か」、「成長性や事業計画の妥当性」、「情報開示」等について審査する。

(2)ファイナンスの引受にかかわる審査(上場申請~払込まで)

上場前の公募又は売出しを行うにあたっての審査であり、直近の月次実績を踏まえた上で、事業計画や成長性、ファイナンスの資金使途の妥当性等を審査する。

私がIPOを担当した企業では、引受審査手続きは計4回の書面審査を中心に実施され、各回の審査では数十~数百個の質問に対して、それぞれ2週間程度で回答する必要がありました。通常業務はもちろん、上場申請書類等の作成を並行して行うため、経営企画、経理、法務等の管理部門を中心に業務に精通したメンバーによるしっかりしたプロジェクト体制を構築しないと現場には大変な負荷がかかることになります。

 

■上場申請期のスケジュール例(3月決算、12月上場の場合)

3月末  申請直前期末

4月中旬~9月上旬 引受審査

9月上旬~11月上旬 取引所審査

12月 上場

 

さて、引受審査ではどのような点について審査されるのでしょうか?日本証券業協会は、新規公開における引受審査項目について、下記のように定めています。

 

■新規公開における引受審査項目

(1)公開適格性

(2)企業経営の健全性及び独立性

(3)事業継続体制

(4)コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の状況

(5)財政状態及び経営成績

(6)業績の見通し

(7)調達する資金の使途(売出しの場合は当該売出しの目的)

(8)企業内容等の適正な開示

このように多岐にわたる審査項目ですが、実は中小企業の経営においても役立つポイントが非常に多くあります。

例えば、予算管理。会社が持続的に継続していくためには、個人経営・属人経営・成り行き経営から脱して、合理的に作成された事業計画に基づく事業運営が必要になります。また、予算と実績の乖離を定期的に確認して、必要な軌道修正をタイムリーに行うことで、利益管理の精度を高めることが出来ます。

また、反社会的勢力の関与を防ぐ為に、新規取引先の属性調査を行うマニュアルや体制の整備、契約書や契約約款の中に反社会的勢力との取引を拒絶する旨を盛り込む等の対応が求められます。

その他では、「労務管理」が特に厳しく見られます。何故なら、企業は優秀な人材を確保して定着させることで、はじめて、上場後の成長性や継続性、安定性を実現できるからです。適切な労務管理のために、タイムカード等で1分単位の勤怠管理を行うことは当然として、残業代が適切に支払われているかどうか、36協定を遵守しているかどうかも確認されます。

日本政府が平成28年9月に立ち上げた「働き方改革実現会議」では、長時間労働の是正を検討課題の1つに挙げており、残業時間に一定の規制を設ける方針との報道もあります。今後は、中小企業にとっても、積極的に労務管理を改善する姿勢がますます重要になっていくのではないでしょうか?

 

さて、無事に審査を通過して、上場承認が下りたら、いよいよ多数の機関投資家を個別に訪問するロードショー(プレ・マーケティング)の始まりです。次回は、ロードショーについて具体的にお伝えしたいと思います。

 

吉村 崇司


16/12/31 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:column-post

リーマンショック以降、低迷していた国内の新規株式公開(IPO)ですが、株式市況の回復と共に中小企業やベンチャー企業のIPOに対する関心は高まりを見せているようです。実際にIPO社数は過去6年連続で増加しており、昨年は92社まで回復しました。足元では、英国の欧州連合(EU)離脱等の混乱により、国内のマーケットにも少なからず影響を与えているようですが、このまま順調に行けば、2016年のIPO社数は久々に100社を超える可能性もあるそうです。

さて、中小企業にとってIPOには、どのようなメリットがあるのでしょうか?そして、株式公開準備では、どのようなことをする必要があるのでしょうか?今回より、計3回の連載で、株式公開の舞台裏について具体的にお伝えしていきたいと思います。

 

1年以上の準備期間を経て、いよいよ待望の新規上場の日

 

当日は、証券取引所でセレモニーが行われ、上場通知書贈呈式や記念撮影が一通り終わった後は、上場記念の打鐘(だしょう)が待っています。打鐘ができるスペース(VIPルーム)は神聖な場所とされ、セレモニー参加者の内、わずか20名しか入場が許されません。

計5回の打鍾は、「五穀豊穣(ごこくほうじょう)」に由来しており、新規上場会社の繁栄への願いが込められているそうですが、IPOプロジェクトメンバーにとって、この打鐘セレモニーこそ、これまでの株式公開準備の苦労が報われる至福の瞬間なのです。

 

さて、そもそも株式公開とは何のためにするのでしょうか?

 

日本取引所グループ(東京証券取引所及び大阪証券取引所の持ち株会社)は、同社のホームページにおいて、下記のような上場のメリットを紹介しています。

 

1.資金調達の円滑化・多様化

2.企業の知名度の向上

3.社内管理体制の充実と従業員の士気の向上

 

これらの恩恵は、すでに知名度や信用力のある大企業よりも、中小企業の方が享受できるのではないでしょうか?例えば、私がIPO準備を担当した企業では、競合他社に先んじて優秀な人材を採用していく必要がある中で、上場による知名度・信頼度向上は非常に大きな武器となりました。また、36協定遵守や各種規程の整備等による管理体制の充実、ストックオプションの付与による従業員の士気向上は、採用した優秀な人材を定着させる上で、必要不可欠なものでした。

また、従業員持株会の設立も上場企業ならではメリットの一つです。従業員持株会というのは、従業員の方々に、臨時積立(100万円未満で一度に株式を購入できる仕組み)や定時積立により、会社の株式を購入していただくものです。従業員持株会を設立することにより、従業員の福利厚生の一つとして、財産形成の機会を提供するだけではなく、会社へのロイヤリティや経営への参加意識向上に繋がるメリットがあるのが特徴です。

 

一方で、上場にはデメリットもあります。

 

IPO準備期間中は、主幹事証券会社と証券取引所による審査がそれぞれ複数回あり、審査対応の連続です。IPO準備プロジェクトメンバーは、矢継ぎ早に繰り出される膨大な質問を、各部署に割り振って、期限内にとりまとめて回答する必要があります。数ヶ月間に渡って、通常業務と審査対応が並行することになり、全社的に業務負担は非常に大きくなります。

また、会社の規模により大きく異なりますが、一般的には上場準備を行っている期間中、主幹事証券会社へのコンサルティング費用、監査法人への監査報酬、証券代行への株式事務代行手数料、証券取引所への上場審査費用が発生します。加えて、社内管理体制充実に伴う新たな人材の採用が必要となるケースが多く、その総額は年間数千万円以上になるようです。このように株式公開は費用負担が大きいため、費用対効果を念頭においた上で、上場を目指す必要があります。

さて、主幹事証券会社と証券取引所による審査とはどのようなものか、次回、具体的にお伝えしたいと思います。

吉村 崇司


16/11/30 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:column-post

競合先と差別化しようというときに、つい「値下げ」を考えがちな方はいませんか?2回にわたって経営の現場で使える管理会計の考え方をご紹介してきましたが、最終回の今回は、値下げが利益に与える影響の大きさについてふれたいと思います。

売上高=価格×販売数量なので、ふつう値下げを行う場合は、価格を下げ販売数量を増やして、売上高を維持または増加させようとするでしょう。しかし最終的には売上高だけでなく、手元に残る利益の確保が不可欠なはず。ではどの程度販売数量を増やしたら値下げ前と同じ利益を得ることができるのか、具体例に試算してみましょう。

1個500円の弁当を製造販売している個人経営の弁当屋を考えます。単純化のため弁当1個あたりの総経費は450円とします。弁当1個を販売すると利益が50円出る状況です(利益率10%)。

 

さて近隣に大手弁当チェーンの店が出店し、同額の1個500円で売り始めたので、弁当屋の社長は値下げで対抗しようと考えました。5%値下げしたとき、同額の利益を確保するには販売数量をどれくらい増やす必要があるでしょうか? 単価を5%下げるのなら販売数量は5%増やせばOKでしょうか?

実際に弁当1個当たりの利益はどう変化するか計算しましょう。

値下げ前(価格500円)の利益は50円です。一方、価格を5%値下げして475円で売った場合、経費はやはり1個あたり450円かかるので利益は25円。その結果、5%の値下げで利益は何と50円から25円に半減してしまいます。従って販売数量は5%増どころか、これまでの2倍売らなければ同じ利益額を確保できません。1日平均1,000個売っているとすると、平均2,000個売る必要があることになります。

このように値下げが利益に与える影響は極めて大きいのです。なぜでしょうか? それは値下げしても費用は減らないので、値下げによる売上減が利益減に直結するからです。この弁当屋の場合、値下げ幅は5%なので利益率は10%-5%=5%に低下します。また元々の利益率は10%なので、もし10%値下げすると利益はゼロになってしまいます。

値下げで利益を確保しようとしても、「値下げ後に大幅な販売数量の増加が望める」、そして「生産拡大により更なるコストダウンが可能」という条件が成立しない限り成功しないことがお判りでしょう。一般に、値下げは大量生産が可能な大企業に適した戦略です。中小企業が競合と対抗するには付加価値の高い、その店ならではの商品やサービスで差別化し、なるべく値下げを回避するのが望ましい姿です。個人経営の弁当屋であれば価格ではなく、大手チェーン店では真似できない味、食材、きめ細かい顧客サービスなどで勝負したいところです。

 

しかし値下げが一概に悪いとはいえません。より重要な目的の実現を目指す「戦略的な値下げ」はありえるからです。具体例としては以下のようなものが考えられます。

・将来の大口取引が見込める優良顧客に、実績作りのため安値で受注する

・値下げ商品を集客手段にして、利益率の高い目玉商品を一緒に売る

・リピーター向けに割引する(例:10回買物してくれたお客様に500円分のクーポンを出す)

このように会社の成長や競争力強化につながる、優良顧客の開拓、顧客単価向上、リピーター囲い込みなどの明確な目的があれば、値下げも有効な手段と言えるでしょう。安易な値下げは禁物です。値下げを考える前に、それが利益に与えるマイナス影響をまず試算し、販売数量の増加やその他の戦略的な目的を実現することで取り戻せるかどうかを、十分検証していただきたいと思います。

大橋 功


16/10/31 21:00 | カテゴリー: | 投稿者:column-post

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